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博士・修士・卒業論文の要旨



Motaharul Kabir Mazumder

『Vapor Phase Epitaxial Growth of Silicon in an Excited Hydrogen Gas(励起水素中におけるシリコンの気相成長に関する研究)』(修士論文、昭和62年度)

 励起水素中におけるシリコン気相成長の反応機構を解明するために、ジクロロシラン(SiH2Cl2)を用いて Si(111)-0ooff表面で気相成長を行ない、ピラミッド状丘の形態と密度密度を調べた(図1)。 キャリア水素ガスは低圧水銀ランプによる紫外線照射領域を通過後にSiH2Cl2と混合され、高周波誘導加熱された試料に供給される。 ピラミッド状丘の密度密度は成長温度の低下(図2)により著しく増加、ガス圧力を低下、もしくは、線速度(=ガス流量÷有効反応管断面積 [cm/s])を大きくする (SiH2Cl2モル濃度を小さくする)と減少することを観察した。このピラミッド状丘の密度密度は、キャリア水素ガスに紫外線照射すると減少するが、 SiH2Cl2に紫外線照射すると増加することを見いだした。成長前に、1200℃で10分間清浄化するときに紫外線照射キャリアガスを用いるとき、 同様にピラミッド状丘の密度密度が減少した。このような傾向から、キャリア水素ガスへの紫外線照射は、結晶欠陥発生の抑制効果があることが示唆された。




図1:SiH2Cl2を用いてCVD成長したSi(111)表面の微分干渉顕微鏡写真。成長時間は1分間、線速度(=ガス流量÷有効反応管断面積 [cm/s])は6 cm/sである。




図2:ピラミッド状丘の発生密度の成長温度依存。




高井 康浩

『Ge/GaAsへテロ界面の固相反応に関する研究』(修士論文、昭和62年度:現在、日本電気株式会社)

Ge/GaAsへテロ界面の固相反応を解明することを目的として、角度分解光電子分光(Angle Resolved X-ray Photoelectron Spectroscopy:ARXPS)と反射高速電子回折(Reflection High-Energy Electron Diffraction:RHEED)を用いて GaAs(001)表面へのGe蒸着過程における表面構造変化、Geの深さ分布、そしてフェルミ準位の変化を調べた。Ga-3d、Ge-3d、As-3d光電子強度の検出角度依存を測定し(図1)、 Geの深さ分布モデル(図2)を用いてそれらの強度比の検出角度依存を解析することにより、580℃でGeを蒸着したときの拡散長が8±2Åと求められた(図3)。 また、Ge蒸着前の清浄GaAs(001)c(8×2)表面のAs/Ga比は0.4と求められ、Ga-richであることが見いだされた。そして、室温でGe蒸着後に580℃で1200秒間アニールしたときのGe拡散長は 2±2Åと評価され、高温での蒸着に比べて大変に拡散し難いことが明らかとなった。




図1:580℃で蒸着したGe(1 ML)/GaAs(001)界面の角度依存XPSパターン。(a) Ge-3dパターン、(b) Ga-3dとAs-3dパターンの和、(c) Ga-3d(実線)とAs-3d(破線)のパターン。 いずれも[1-10]方位での測定。




図2:(a) 清浄GaAsc(8×2)表面と、(b) 580℃で蒸着したGe(1 ML)/GaAs(001)界面の組成分布モデル。




図3:580℃で蒸着したGe(1 ML)/GaAs(001)界面の光電子強度比(a) I(Ge-3d)/I(Ga-3d)、(b) I(Ge-3s)/I(As-3d)、(c) I(As-3d)/I(Ga-3d)の極角依存の測定データと組成分布モデルを基づくシミュレーションの比較。 Geの拡散長は6-10Åと見積もられた。




野河 正史

『シンクロトン放射光を用いた結晶成長の素過程の研究』(卒業論文、昭和62年度)

 シンクロトン放射光を用いた結晶成長の素過程を解明するために、表面分析機能として放射光(BL-11C)とHe-I共鳴線(21.22 eV)を用いた 紫外光電子分光、オージェ電子分光、反射高速電子回折、そして、光刺激脱離、また、表面処理・反応用としてイオン銃、ガスドーザ、そして残留ガス分機器から構成される 複合表面解析装置を開発した(図1)。表面反応観察用に設計した真空槽は、表面分析、表面準備、そして、真空排気の3段のレベルから構成されている(図2)。 それぞれの表面分析及び表面処理・反応のための機器の開発だけでなく、制御電源そして制御・計測用ソフトウェアの開発も同時に進めた。 通常、この装置は東北大学/電気通信研究所で使用されているが、放射光を用いた実験を行う期間にはPhoton Factory/BL-11Cに持ち込み、現地で組立て調整/真空排気して実験を進め、 ビームタイム終了後には再び分解して仙台まで持ち帰った(図3)。




図1:放射光を用いたリアルタイム光電子分光のための複合表面解析装置のブロック図。




図2:放射光を用いたリアルタイム光電子分光のための複合表面解析装置の反応用真空槽の図面。




図3:Photon FactoryのBL-11Cに取り付けられた放射光を用いたリアルタイム光電子分光のための複合表面解析装置。(1989/3/3)





三沢 繁樹


『角度分解型X線光電子分光法によるGe/GaAs界面の研究』(修士論文、昭和61年度:現在、東北電力株式会社)
 Ge/GaAs界面における固相反応と電子状態の変化を解明するために、角度分解光電子分光(Angle Resolved X-ray Photoelectron Spectroscopy:ARXPS)と反射高速電子回折(Reflection High-Energy Electron Diffraction:RHEED)を用いてGe蒸着過程を観察し、表面構造と化学組成を調べた。真空中でのGaAs表面処理条件(Ar+イオン・スパッタリング、高温アニール)を系統的に調べ、 安定して、再現性良くc(8×2)表面をつくだすことができた(図1, 2)。GaAs(001)c(8×2)表面へのGe蒸着過程における表面構造の変化をRHEED観察し、 Ga 3d、Ge 3d、As 3d光電子スペクトルから表面近傍での化学組成の変化を明らかにした。これらのデータ解析のために、RHEED回折パターンのシミュレーションプログラム、 及び、X線光電子回折パターンのシミュレーションプログラムも開発した。




図1:GaAs(001)表面のクリーニング前後でのワイドスキャンXPSスペクトル。




図2:GaAs(001)c(8×2)表面のRHEED回折パターン。




図3:GaAs(001)c(8×2)表面へのGe蒸着過程におけるGa 3d、Ge 3d、As 3d光電子スペクトル。




松吉 聡

『X線光電子回折法による金属/GaAs界面の研究』(卒業論文、昭和61年度)

 金属/GaAs界面での固相反応を解明するために、X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)と反射高速電子回折(Reflection High-Energy Electron Diffraction:RHEED)を用いてGaAs(001)表面へのGe蒸着過程を調べた。 先ず、X線光電子スペクトルとX線光電子回折パターン測定およびデータ処理のためのプログラム開発を行なった。これらを用いて、GaAs(001)表面の清浄化過程、そして、 Ge蒸着過程における表面組成を評価した(図1)。これに基づいて、Ge蒸着量を変えながらGe/GaAs(001)界面を作製し、RHEEDにより表面構造を観察した(図2, 3)。 さらに、表面構造のGe蒸着条件(基板温度、Ge蒸着速度)への依存も明らかにした。また、ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)機能付きの Al合金製複合表面解析装置を開発にも参加し、とりわけ、RHEED観察システム、真空ポンプ制御系、膜厚測定モニターなどの製作を行なった。




図1:GaAs(001)表面のワイドスキャンXPSスペクトル。(a) Ge(10 ML) / GaAs(001)2×1/1×2表面、(b) 清浄GaAs(001)c(8×2)表面、 (c) 硫酸系溶液によるエッチング処理後のGaAs(001)表面。




図2:Ge/GaAs(001)表面のRHEED回折パターンのGe蒸着量依存。



図3:Ge蒸着量と表面構造の関係。






大山 直樹

『表面構造解析法による半導体ヘテロ接合界面の研究』(卒業論文、昭和61年度)

 表面構造解析法により半導体ヘテロ接合界面構造を解明するために、ガスソース分子線エピタキシー (Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)機能付きのAl合金製複合表面解析装置の開発を中心になって進めた(図1)。設計を担当した機器は、Al合金製主真空槽、 5軸の自由度をもつ試料マニピュレータ、荒引き・ガス導入系、真空排気制御系である。それらの製作・組立・調整も進めた。さらに、薄膜成長のためにクヌードセンセル(図2)と 電子ビーム蒸着源(図3)の設計・製作、そして、RHEED観察のための電子銃、蛍光スクリーン(図4)、観察用暗箱、RHEED回折スポット強度モニターの開発も進めた。 また、この装置を設置する簡易クリーンルーム内の天井配線構造物、水冷配管、油回転ポンプ排ガス配管などの設置作業も行なった。




図1:ガスソースMBE機能付き複合表面解析装置の構成図。




図2:クヌードセンセルB(るつぼ型)のAlクライオパネルを取り外したときの外観。



図3:Alクライオパネルを取り外したときの電子ビーム蒸着源。右側に液体窒素シュラウドと中心にSiウェハを設置した蒸着部を見ることができる。



図4:RHEED観察用の蛍光スクリーンの全部に回折スポット強度を測定するためのファラディカップ取り付けたときの組立の様子。



齋藤 安正

『水素プラズマによるシリコンの気相成長』(卒業論文、昭和60年度)

 水素プラズマによるシリコンの気相成長プロセスを開発するために、高周波誘導加熱型大気圧/減圧CVD装置に紫外線照射機能を追加し、 ジクロロシラン(SiH2Cl2)によるSi(111)表面での気相成長において紫外線照射効果を調べた。波長185 nmの紫外線(通常は254 nmの紫外線が主)が強い紫外線ランプを パイレックスガラス製ハウジングの中に組立て、SiH2Cl2との混合前のキャリア水素ガスのラインに紫外線照射部とその遮蔽ボックスとを一緒に取り付ける改良を行った(図1)。 SiH2Cl2を用いてCVD成長したSi(111)-0ooff表面の微分干渉顕微鏡で観察して、ピラミッド状丘の発生密度がガス圧力を低下させると、急速に減少することを観察した。 ピラミッド状丘が多数発生する成長条件でキャリア水素ガスに紫外線を照射すると、ピラミッド状丘の発生密度が大きく減少することを見いだした。このことから、 成長温度を低下させても、紫外線照射キャリア水素ガスを用いることにより、ピラミッド状丘の発生密度を抑制して気相成長できることが示唆された。




図1:低圧水銀ランプを用いた紫外線励起機構を組み合せた高周波加熱CVD装置のブロック図。




図2:SiH2Cl2を用いてCVD成長したSi(111)表面の微分干渉顕微鏡写真。成長温度は1000℃、成長時間2分間、H2で希釈した SiH2Cl2の供給濃度は3.7×10-4 mol/minである。H2キャリアガスへの紫外線照射なし(左)、照射有り(右)。




高井 康浩

『レーザビーム加熱法による砒化ガリウムのオーミック接触形成』(卒業論文、昭和60年度)

 レーザビーム加熱法による砒化ガリウムのオーミック接触形成機構を解明するために、 角度分解X線光電子分光と反射高速電子回折のための複合表面開発装置の整備を進めるとともに、電気特性評価システムの開発を行なった。 また、GaAsへテロ界面のレーザ加熱処理のために、Nd:YAGレーザ装置の整備も行った。複合表面解析装置では、 とりわけ完全半球型電子エネルギー分析器の入射電子レンズの設計を行ない、7段電極から構成される静電偏向型のafocal lensを製作し、その計測制御プログラム、 そして、GP-IBインターフェース付きの制御電源の製作を行なった。また、RHEED回折スポットのリアルタイムモニタリングのために、 光ファイバ/光電子増倍管を用いた集光システムを製作した(図1, 2)。また、砒化ガリウムのオーミック接触の電気特性評価システムの計測プログラムを開発し、 市販のダイオードでテストを行なった。




図1:RHEED回折スポット強度を測定するための光ファイバ位置の微調整システムの図面。蛍光スクリーンの回折パターンは、 一眼レフカメラの光学レンズを用いてアクリル板(61)に結像され、(73)に固定された光ファイバに取込まれる。 光ファイバ位置の微調整はXステージ(59)とYステージ(60)のマイクロメータを用いて行なう。光ファイバの他端には光電子増倍管が接続され、 光電子電流はピコアンメータでコンピュータに取込まれる。




図2:RHEED回折パターンの位置の粗調整のために用いられる、X-Y偏向用の電磁石。蛍光スクリーンの前に設置する。アクリル板の回折パターンを見ながら、 粗調整により観察対象の回折スポットを光ファイバ位置まで移動させ、その後、微調整システムで位置を最適化する。




図3:電気特性評価システムの構成図。




図4:電気特性評価システムのテストのために測定した市販ダイオードのI-V特性。




三沢 繁樹

『角度分解型X線光電子分光法によるGaAs表面の研究』(卒業論文、昭和59年度)

GaAsへのヘテロ界面形成における固相反応を解明するために、角度分解X線光電子分光と反射高速電子回折のための 複合表面解析装置の開発を行なった。装置全体の組み立てと、ベーキングを繰り返すことにより、~2×10-10 Torrの到達真空度を達成した。 その作業と平行して、X線光電子スペクトルの測定プログラムの開発と、RHEED観察のための電子銃、制御電源(図1)、蛍光スクリーンなどの製作を進めた。 GaAs(001)表面のウェット処理のために、硫酸系エッチング液の組成を変えて処理したGaAs(001)表面を微分干渉顕微鏡で観察することにより、組成の最適化を行なった(図2)。さらに、真空中でのAr+イオン・スパッタリングと加熱処理の条件を、 表面構造・形態をRHEEDとXPSで観察することにより明らかにした。




図1:自作したRHEED電子銃の制御電源のブロック図。




図2:硫酸処理(H2SO4: H2O2: H2O = 7: 1: 1)したGaAs(001)表面の微分干渉顕微鏡写真。エッチング時間は2分間。




図3:真空中で加熱処理したGaAs(001)表面のRHEED回折パターン。電子ビームのエネルギーは10 keVで、[100]方位入射。





橋田 由起夫

『プラズマ中におけるSiの気相成長』(卒業論文、昭和58年度)

プラズマを用いたSi気相成長プロセスを開発するために、減圧成長実験用に大気圧CVD装置を改良した(図1)。 これに合わせて、試料加熱も抵抗加熱型から高周波誘導加熱型へと改良した。改良したCVD装置で、水素キャリアガスで希釈した四塩化ケイ素(SiCl4)を用いて Si(111)-0ooff表面で成長実験を行い、微分干渉顕微鏡で観察したピラミッド状丘(図2)の発生頻度の基板温度、線速度(=ガス流量÷有効反応管断面積 [cm/s])、 ガス圧力への依存を調べた。プラズマは2.45GHzのマイクロ波を用いて発生させるために、水素キャリアガス配管の一部にキャビティを組込み、 2.45GHzのマグネトロン(2M172:東芝、840 W)は家庭用電子レンジを解体して利用した。これに自作したOutput Coupleと単向管、変換コネクタを経由して、 同軸ケーブルを用いてキャビティへとマイクロ波は伝送される。マイクロ波の漏れを抑制するために、装置全体を金属金網で囲った。実際に、CVD装置に組込み、 プラズマ発生のテスト実験を進めた。




図1:減圧成長実験用に改良された高周波誘導加熱CVD装置のブロック図。




図2:大気圧の四塩化ケイ素(SiCl4)を用いて、1050℃で成長させたときのSi(111)-0ooff表面形態の微分干渉顕微鏡写真。




図3:2.45GHzのマイクロ波を用いて生成したプラズマを利用するために改良された抵抗加熱CVD装置のブロック図。




谷田部 良久

『金属と砒化ガリウムの接触』(卒業論文、昭和58年度)

金属と砒化ガリウムの接触における固相反応機構を解明するために、角度分解X線光電子分光のための複合表面解析装置の内、とりわけ、 測定制御系の開発を行なった(図1)。測定制御系は、電子ネルギー分析器の完全半球型アナライザーと入射電子レンズの制御系と、光電子信号の検出・処理系に区分され、 それぞれの機器はGP-IBインターフェースを通して、パーソナルコンピュータ(PC-9801:NEC)により制御される。そのため、Z80 CPUからなるGP-IBインターフェースボードを作製し、 カウンター/タイマー(図2)、電子レンズ電源、加速・減速電源、パルスモータ制御回路電源(図3)のそれぞれを駆動するプログラム開発を行なった。 そして、それら全体を制御するための、BASICによる計測・制御プログラムを開発した。




図1:角度分解X線光電子分光装置の測定制御系のブロック図。




図2:GP-IBインターフェース付きカウンタ/タイマ制御装置。



図3:GP-IBインターフェース付きパルスモータ制御装置。




高橋 勝徳

『Siの光エピタキシィ』(卒業論文、昭和57年度)

 大気圧CVDによるSiホモエピタキシャル成長の低温化を目的として、炭酸ガスレーザ(波長:10.6μm)による気相反応励起の研究を行った。 原料ガスとして水素希釈の四塩化硅素(SiCl4)を用い、赤外線透過用のGe窓を取り付けたホットウォール型CVD炉を製作した。炭酸ガスレーザを組立て上げ、とりわけ反射鏡を自作した。 また、気相反応励起なしでの予備実験として、抵抗加熱の大気圧CVD炉を用いて、H2希釈SiCl4ガスによるSiエピタキシャル成長における表面形態の線速度 (=ガス流量÷有効反応管断面積 [cm/s])依存を明らかにした。




図1:炭酸ガスレーザと組み合せた抵抗加熱大気圧CVD炉のブロックダイアグラム。赤外線導入の光学窓にはGe結晶を使用。