東北大学多元研 高桑研究室 本文へジャンプ

博士・修士・卒業論文の要旨



浅野 光弘

『ダイヤモンド気相成長における電子放出の研究』(修士論文、平成11年度)

 ダイヤモンド気相成長における電子放出を利用したプラズマCVDプロセスを開発するために、 ダイヤモンド気相成長中の表面状態を「その場」観察できる複合表面解析装置、とりわけ、飛行時間型質量分析紫外光法と組み合せた電子刺激脱離及び電子分光のための機器の開発・調整を行った。 試料温度を通電加熱で制御するとき、加熱電流による磁場がもたらす光電子軌道の偏向や試料電位による光電子スペクトルのエネルギー・シフトを除くために、 パルス電流を用いて試料加熱するだけでなく、加熱電流がOFFの期間に光電子信号を取込むパルス回路を開発した。 これを用いて、高圧合成ダイヤモンドC(001)表面での水素吸着・脱離による電子親和力と二次電子放出収率を高温で「その場」観察可能とした。

キーワード:ダイヤモンド、水素終端、負性電子親和力、電子放出源、UPS、「その場」観察




図1:リアルタイムUPS観察システムのブロック図。 測定試料は通電加熱により温度制御される。加熱電流による磁場のために光電子の軌道が変化することと、試料電位により光電子スペクトルがシフトすることを防ぐために、 加熱にパルス電流と信号処理にゲート回路を用いることで、電流がOFFの期間のみで光電子を計測可能とした。




図2:水素終端ダイヤモンドC(001)表面を700℃で「その場」観察した価電子帯光電子ペクトル:パルス電流(青丸)と直流電流(赤丸)を用いたときの比較。




図3:700℃でH2ガス(Wフィラメントで活性して水素ラジカル生成)に曝したときの、高圧合成ダイヤモンドC(001)表面の電子親和力のH2暴露時間依存。 表面水素吸着量の増加にともない、約60分後に電子親和力は正から負へと変化している。




石田 史顕

『RHEED-AES法によるSi熱酸化過程の研究』(修士論文、平成11年度:現在、エプソン株式会社)

 Si表面のドライ酸化による極薄シリコン酸化膜形成機構を解明するために、 Si(001)表面酸化過程をオージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)を用いて「その場」観察し、酸化膜被覆率と表面構造・形態を一緒に観察した。 Si酸化反応過程をRHEED-AESでリアルタイムモニタリングするために、既存の複合表面解析装置を改良・調整をした。 RHEED観察条件でSi表面の酸化膜からのO-KLLオージェ電子強度を十分な強度で測定できることを明らかにし、酸化膜被覆率の関数として表面荒れや未酸化を可能とした。 両者の相関から、表面酸化様式領域の1×2/2×1分域比を調べること(ラングミュア型吸着、二次元島成長、エッチング)に依存した酸化Si(001)表面の構造・形態の変化を明らかにした。

キーワード:CMOSゲートスタック、Si酸化プロセス、極薄SiO2膜成長、SiO2膜分解、酸化誘起歪み、点欠陥発生、RHEED-AES、リアルタイム観察、相転移




図1:Si酸化反応実験用に改良したRHEED-AESのための複合表面解析装置のブロック図。



図2:(a) 清浄Si(001)2×1表面の、(b) 二次減島成長の表面酸化様式で形成したSiO2/Si(001)表面のRHEED回折パターン。 バルクSiからの透過回折スポットは、酸化によりSiO2/Si(001)界面が荒れていることを示している。(b)で形成したSiO2/Si(001)表面のO-KLLオージェ電子スペクトル。 Si酸化反応中にピーク位置とバックグランド位置の2点の強度を連続的にリアルタイムモニタリングし、前者を後者で規格化することによりRHEED用電子ビームの強度変動や、 試料表面での照射位置の変動による影響を取り除いて、酸化膜被覆率を求めることができる。




図3:Si(001)表面酸化の二次元島成長における表面形態モデルと、リアルタイムRHEED-AES観察から求められた(0, 0)、(1/2, 0), (0, 1/2)回折スポット強度、 (1/2, 0)/(0, 1/2)回折スポット強度比、バルク回折スポット強度の酸化膜被覆率との相関。




小杉 亮治

『3C-SiC/Siの初期へテロ成長機構の研究』(博士論文、平成10年度:現在、産業技術総合研究所)

 3C-SiC/Siの初期へテロ成長機構を解明するために、エチレン(C2H4)によるSi(001)表面の炭化反応過程について、 X線光電子回折(XPD)により拡散した炭素原子の格子位置と深さ分布測定、放射光(BL-11C, Photon Factory)を用いた光電子回折により表面近傍での炭素原子の格子位置の決定、 オージェ電子分光と複合化した反射高速電子回折(RHEED-AES)により炭素吸着曲線と表面構造・形態を一緒にリアルタイム観察、 そして、走査トンネル顕微鏡を用いて表面構造・形態の変化の微視的観察を行なった。 それらの観察結果から、炭化反応初期に見られる3C-SiC核発生の時間遅れでは、表面近傍のみで炭素濃度の高いSi1-xCxx < 0.2)合金層が形成されていること、 そのとき拡散したC原子は格子位置に置換していること、Si1-xCx合金層の炭素濃度の上限x = ~0.2に達すると3C-SiCの核発生が開始されること、 このとき高温ではC原子の表面拡散により凹凸の大きな3C-SiC島が形成されるのに対して、低温では比較的平坦な3C-SiC膜が成長できることを明らかにした。

キーワード:Si表面炭化反応、エチレン、3C-SiC、核発生、RHEED-AES、XPD、STM、「その場」観察、放射光




図1:エチレン(C2H4)による炭化反応で形成したSi(001)c(4×4)表面のC 1s光電子スペクトル(左)。 光エネルギーは400 eV(BL-13C, Photon Factory)、光電子取り出し角度(take-off angle: θt)は50oである。 θtからピークAは表面成分、ピークBはバルク成分である。ピークAとピークB成分の光電子強度の方位角依存(左)。 ピークA成分に異方性が見られないことから、ピークA成分は表面に吸着したC2H4分子と考えられる。ピークB成分には顕著な異方性が現れていることから、 Si基板中の格子位置に置換したC原子からのものであるとが分かる。




図2:エチレン(C2H4)による炭化反応で形成したSi(001)c(4×4)表面のC 1s光電子強度の方位角依存(左)。 光エネルギーは1253.6 eV(Mg Kα線)、光電子取り出し角度θtは45o、35o、14o、12o、である。 Si結晶の断面モデルと光電子回折ピーク(Forward Focusing Peak)の特徴的な角度(右)。 θt=35oで見られる方位角0oと90oで見られるピークは、第三層と第四層に置換したC原子からのC 1s光電子が前方に位置するSi原子により回折されるために生じたものである。




図3:(左)エチレン(C2H4)によるSi(001)表面の炭化反応過程のリアルタイムRHEED-AES観察:C-KVVオージェ電子強度、3C-SiCによる回折スポット、 (0, 0)鏡面反射スポット、c(4×4)に起因する(1/4, 1/4)回折スポットのRHEED強度のC2H4暴露時間依存。(右)RHEED回折パターン:(a) 清浄Si(001)2×1表面、 (b) 3C-SiC核発生前のc(4×4)表面、(b) 3C-SiC成長後の表面。




図4: Si(001)表面炭化による3C-SiC核発生・ヘテロ成長における表面形態モデル。




河野省三先生の退職記念祝賀会で仙台に来た時に、研究室に立ち寄られました(2010/3/7)。




金井 敏行


『シリコン表面の炭化反応の高温「その場」観察』(卒業論文、平成10年度)
 Si表面炭化による3C-SiC核発生機構を解明するために、 エチレン(C2H4)によるSi(001)表面の炭化反応過程をオージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)を用いて 炭素吸着曲線と表面構造・形態を一緒にリアルタイム観察し、3C-SiC核発生の時間遅れ(Incubationn Time:Si表面にC2H4曝露後3C-SiC核が発生するまでの時間)を調べた。 Si(001)基板として、(001)表面からのオフ角度が0.02o、0.4o、4.0oのものを使用した。どの表面でも基板温度が高くなるにつれ、時間遅れは短くなり、 また、基板のオフ角度を大きくしてステップ密度が増加するにつれて時間遅れは著しく短くなることを見いだした。 この傾向から、3C-SiCは表面に供給される炭素原子数だけでなく、高温Si表面で拡散している吸着Si原子(Si adatom)も3C-SiC核発生の律速過程の要因であることが示唆された。

キーワード:Si表面炭化反応、エチレン、3C-SiC、核発生、RHEED-AES、「その場」観察、基板オフ角度




図1: エチレン(C2H4)による炭化反応中のSi(001)表面におけるC-KVVオージェ電子強度、3C-SiC回折スポット強度、そして(0, 0)鏡面反射スポット強度の時間発展。 3C-SiC回折スポット強度の立ち上がりから、3C-SiC成長開始の時間遅れ(Incubation Time)を求めた。




図2:3C-SiC成長開始の時間遅れの温度依存。Si(001)基板のオフ角度は0.02o、0.4o、4.0oのものを用いた。




安田 智樹

『気相成長中のダイヤモンド表面からの電子放出の研究』(卒業論文、平成10年度:現在、日産自動車株式会社)
 気相成長中のダイヤモンド表面からの電子放出を観察するために、紫外線光電子分光(UPS)、 オージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)、飛行時間質量分析による電子刺激脱離(UPS)の機能を備えた複合表面解析装置の改良・調整を行った。 とりわけ、ガス雰囲気中での動作の信頼性を向上させるために、電子エネルギー分析器(EA125, OMICROM)の検出器をチャンネルトロン(左)から 20段のダイノードをもつ二次電子増倍管(右)へと改良を、浅野光宏君と一緒に行なった。 これを用いて、実際に水素ラジカル照射中の高圧合成ダイヤモンドC(001)表面のUPSスペクトルを「その場」観察することを可能とした。

キーワード:ダイヤモンド、水素終端、負性電子親和力、UPS、「その場」観察




図1:電子エネルギー分析器(EA125, OMICROM)の検出器:チャンネルトロン(左)、20段のダイノードをもつ二次電子増倍管(右)。




図2:水素雰囲気中で観察された高圧合成ダイヤモンドC(001)表面のUPSスペクトル。励起光はHe-I共鳴線(21.22 eV)である。




金 起先(Kim Ki-Seon)

『In-Situ Observation of Desorption and Diffusion Processes of In, Sb and Bi on High-Temperature Si Surfaces』(博士論文、平成9年度)

 高温Si表面での金属原子の動的過程(吸着、脱離、拡散、表面偏析)の反応機構を解明するために、オージェ電子分光と複合化した 反射高速電子回折(RHEED-AES)を用いて高温Si(001)表面での金属原子の被覆率と表面構造・形態を一緒にリアルタイムモニタリングし、その相関を調べた。 Si(001)表面からのIn、Sb、そしてBi原子脱離の反応次数と活性化エネルギーを求め、脱離にともなう表面構造・形態の変化から脱離反応キネティクスの表面反応モデルを提案した。 さらに、Sb原子については表面変性エピタキシー(Surfactant Epitaxy)と固相成長におけるδドーピングにおける、拡散と表面偏析係数の温度依存を調べ、 成長したSi膜の結晶性との関係を明らかにした。

キーワード: 金属吸着Si表面、拡散、脱離、表面変析、エピタキシャル成長、RHEED-AES、リアルタイム観察




図1:リアルタイムRHEED-AES用に改造された複合表面解析装置のブロック図。金属蒸着源、Si蒸着源、そして紫外光電子分光用の二段差動排気付き希ガス放電管を備えている。




図2:Si(001)表面からのSb脱離過程のリアルタイムRHEED-AES観察の模式図。




図3:Si(001)表面からのSb脱離過程におけるSb被覆率の時間発展(右下)、Sb脱離の一次反応モデルを用いて求めた反応係数のアレニウスプロット(右上)、 Sb被覆率とRHEED回折スポット強度の時間発展の比較(左上)。Sb脱離の表面反応モデル(左下)。




図4:Si(001)表面からのSb脱離過程のオージェ電子分光観察における、リアルタイムモニタリング法(右)とクエンチ法(左)の比較。 クエンチ法では高温でのSb脱離を室温まで急冷した表面をAES観察し、その後高温に過熱してSb脱離を繰り返す。 これに対して、リアルタイムモニタリング法では高温でのSb脱離過程を約2秒のサンプリング速度で「その場」観察する。  前者に対して、後者では多くの測定点を得られるのでSb脱離キネティクスを詳細に観察できるだけでなく、急昇温−急冷の繰り返しによるSb脱離過程への影響を除くことができる。




西森 年彦

『ガスソース分子線エピタキシー法によるダイヤモンドの気相成長の研究』(博士論文、平成9年度:現在、三菱重工株式会社)

 ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Moleculaer Beam Epitaxy: GSMBE)によるダイヤモンド気相成長を解明するために、 高圧合成ダイヤモンドC(001)表面における水素/メタンの吸着・脱離反応過程を高速反射電子回折と組み合せた飛行時間型質量分析法を用いた電子刺激脱離(Electron-stimulated Desorption:ESD)により調べ、 GSMBEにより得られたダイヤモンド成長速度と比較することにより、ダイヤモンド表面からの水素脱離が律速反応であることを明らかにした。 水素脱離を促進させてダイヤモンド成長速度を増加させるために、ダイヤモンド表面への電子照射、水素ラジカル照射、メチルラジカル照射(CH4を電子衝撃により解離)の効果を調べ、 水素ラジカル照射が高品質ダイヤモンド成長のために重要であることを明らかにし、その反応モデルを提案した。 さらに、燐ドーピングによるn型ダイヤモンド薄膜成長を試み、pn接合ダイヤモンドを作製して、電気特性だけでなく発光特性も解明した。

キーワード: ダイヤモンド、気相合成、ガスソース分子線エピタキシー、不純物ドーピング、RHEED、XPS、ESD、水素引抜き反応




図1:ダイヤモンド気相成長の律速反応過程を調べるための実験手段と、そのための各機器の配置図。




図2:メタン(CH4)を用いたガスソース分子線エキタキシー法によるダイヤモンドホモエピタキシャル膜のRHEED回折パターン(中央)とC 1s光電子スペクトル(右)、 そして、成長速度のアレニウスプロット(左)。基板は高圧合成ダイヤモンドC(001)である。




図3:高圧合成ダイヤモンドC(001)表面でのCH4吸着係数、H2脱離係数、ダイヤモンド成長速度の温度依存の比較。




図4:ダイヤモンド成長速度のアレニウスプロット:原子状水素を成長表面に照射したときとしないときの比較。基板は高圧合成ダイヤモンドC(001)である。




疋田 智弘

『GSMBE法によるダイヤモンド気相成長解析装置の製作』(修士論文、平成9年度:現在、富士通株式会社)

 ダイヤモンド気相合成における表面反応機構を解明するために、ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)と 組み合せた複合表面解析装置を設計・製作・調整した。この装置は、紫外光電子分光、オージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折、カソードルミネッセンス、電子エネルギー損失分光、 飛行時間型質量分析と組み合せた電子刺激脱離によりGSMBE成長中のダイヤモンド表面を「その場」観察できる機能を備えている。 真空排気の制御系、ベーキングの制御系、UPSのための希ガス放電管の差動排気系、水素ラジカル源の制御系などの開発を行い、装置全体を組み立て後に、 ~2×10-10 Torrの到達真空度を達成した。そして、電子刺激脱離と紫外光電子分光によりダイヤモンド表面を観測できることを達成した。

キーワード: ダイヤモンド、気相合成、表面反応、「その場」観察、UPS、ESD、飛行時間型質量分析




図1:ダイヤモンド気相成長「その場」観察の複合表面解析装置の機能と、そのための各機器の構成。




図2:ダイヤモンド気相成長「その場」観察の複合表面解析装置の真空排気系のブロック図。




図3:ダイヤモンド気相成長「その場」観察の複合表面解析装置の全体写真。




浅野 光弘

『電子刺激脱離法によるダイヤモンド表面の「その場」観察』(卒業論文、平成9年度)

 ダイヤモンド表面での水素の吸着脱離反応を解明するために、飛行時間型質量分析(Time-of-Flight Mass spectrometry: TOF-MS)と 組み合せた電子刺激脱離(Electron-stimulated Desorption: ESD)によるダイヤモンド表面の「その場」観察法を開発した。 とりわけ、TOF-MS用の飛行時間分析管とその制御回路の調整を行い、水素ガス雰囲気中のダイヤモンド表面からのESDイオンを観測することを可能とした。 これにより、ダイヤモンド表面の水素被覆率のH2暴露時間依存を調べ、WフィラメントによるH2分子の活性化の効果を明らかにした。

キーワード:ダイヤモンド、水素吸着、ESD、飛行時間型質量分析




図1:水素雰囲気中の高圧合成ダイヤモンドC(001)表面からの電子刺激脱離種の飛行時間スペクトル。 RHEED用の斜入射電子ビームを静電偏向板で曲げることにより、試料表面への電子照射をパルス化し、飛行時間測定のタイミングを決定している。 Beam Shutterは試料表面から電子ビームが外れているときに、試料近傍を電子ビームが通過するのを阻止することができる。 e-と記したピークは試料表面で弾性散乱された電子によるもの、H+イオンは試料表面から電子刺激により脱離した水素イオンによるものである。




図2:H2雰囲気中及び水素原子中(H2雰囲気中でWフィラメントを約2000℃で加熱)のダイヤモンド表面の水素被覆率のH2暴露時間依存。




佐々木 成也

『RHEED-AES法によるSi表面の炭化過程の「その場」観察』(卒業論文、平成9年度)

 炭化によるSi表面への3C-SiCへテロ成長機構を解明するために、エチレン(C2H4)によりSi(001)-4ooff表面の炭化反応過程をオージェ電子分光と 組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)で「その場」観察し、基板のオフ角度の効果を調べた。 3C-SiC核発生までのC2H4暴露時間の温度依存を測定し、Si(001)-0.4ooff表面に比べて、3C-SiC核発生時間が短くなっていることを明らかにした。 また、Si及び金属蒸着源の開発も行った。

キーワード:Si表面炭化反応、3C-SiC、核発生機構、RHEED-AES、「その場」観察、




図1:エチレン(C2H4)により炭化したSi(001)表面におけるC-KVVオージェ電子スペクトル。




図2:Si(001)表面の炭化反応過程におけるC-KVVオージェ電子強度、(0, 0)鏡面反射スポット強度、3C-SiCの回折スポット、c(4×4)構造に起因する回折スポット強度のC2H4暴露時間依存。 炭化温度は646℃である。




石田 史顕

『金属吸着Si表面の高温その場観察』(卒業論文、平成8年度:現在、EPSON株式会社)

 Si(001)表面からのV族金属インジウム(In)脱離反応機構を解明するために、オージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)を用いて In被覆率と表面構造・形態の時間発展を「その場」観察した。In被覆率の解析から、In脱離は1/2次反応であることが同定され、その活性化エネルギーが2.65 eVと求められた。 In被覆率と表面構造変化【(4×3)から(2×1)】の相関から、In脱離の表面反応モデルが提案された。

キーワード:金属吸着Si表面、インジウム、脱離過程、RHEED-AES、リアルタイム観察




図1:In吸着(~0.5 ML)Si(001)表面で「その場」観察されたIn MNNオージェ電子スペクトル。基板温度は482℃である。




図2:In吸着(~0.5 ML)Si(001)表面からのIn脱離過程におけるIn被覆率の時間発展の温度依存。




佐野 正浩

『ダイヤモンド気相成長解析装置の製作』(卒業論文、平成8年度:現在、ブリジストンタイヤ株式会社)

 ダイヤモンド気相成長の表面反応機構を解明するために、ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)と 組み合せた複合表面解析装置の開発を行い、とりわけ、真空槽および排気系の設計・製作・組立て調整を行った。 ダイヤモンド表面でのGSMBE成長の表面分析を「その場」観察で行うために、両者の機能のための機器が全て、ダイヤモンド表面の一点に向き合っていなければならないので(図1)、 38個のCFフランジをもつ球型真空槽を開発した(図2, 3)。また、チタンサブリメーション・ポンプ用の真空槽の開発も進めた。

キーワード:ダイヤモンド、気相成長、ガスソース分子線エピタキシー、複合表面分析装置




図1:ダイヤモンド気相成長「その場」観察のための複合表面解析装置の構成機器と配置図。




図2:球型真空槽の図面。CF70フランジが18個、CF114フランジが9個、CF152フランジが5個、CF203フランジが4個取り付けられている。




図3:架台に取り付けられた球型真空槽の外観写真。




東北大学/多元物質科学研究所パンフレットの表紙

須山智史さん、佐野正浩さん、疋田智弘さんが開発を進めた球型真空槽が、多元物質科学研究所パンフレットの 表紙に掲載されました。



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