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博士・修士・卒業論文の要旨



加賀 利瑛

『光電子制御プラズマCVDプロセスの基礎過程の研究』(修士論文、平成22年度:現在、青森県立大間高等学校)

 光電子制御プラズマCVDプロセスの放電機構の解明を目的として、3インチ基板対応光電子制御プラズマCVD装置の製作・組み立て・調整、Xeエキシマランプからの紫外線(= 7.2 eV)照射によるSiO2(350 nm)/Si(001)基板表面からの光電子放出過程とArプラズマ生成過程の解明と、Ar希釈CH4を用いてSiO2(350 nm)/Si(001)基板表面への多層グラフェン成長を検討した。真空中で測定したSiO2(350 nm)/Si(001)基板表面からの光電子電流はSi表面のものとほぼ同じであり、SiO2膜による紫外線の吸収、そして励起された光電子の散乱による減衰は無視できる程に少ないことを明らかにした。しかし、電子エネルギー分析器(OMICRON, EA125)による測定から、Si表面よりもSiO2(350 nm)/Si(001)基板表面で光電子の運動エネルギー分布が小さいことを見いだした。これに基づいて、両者の表面でArプラズマの放電特性が大きく異なることを説明した。集光レンズと光ファイザバー付き発光分光装置(Jobin Yvon, HR460)を用いて、生成したArプラズマ中の励起原子とイオンを観察し、それぞれの存在量の放電条件への依存を明らかにした。実際に光電子制御Ar希釈CH4プラズマを用いて、SiO2(350 nm)/Si(001)基板表面に多層グラフェンを成長できることを示した。

キーワード:光電子制御プラズマCVD、プラズマ発光分光、紫外光電子分光、多層グラフェン

2010年11月25日 加賀利瑛君が応用物理学会講演東北支部奨励賞を受賞




図1:グラフェン形成方法の比較表。グラフェンをLSI多層配線に応用するためには、(1)層間絶縁膜への損傷を避けるために~400℃以下の低温成長、(2)12インチ基板への全面成長、(3)SiO2膜に触媒なしでのグラフェン成長が求められ、これまで提案された方法の中でプラズマCVDのみが対応可能である。




図2:3インチ基板対応光電子制御プラズマCVD装置のブロック図と全体写真。Xeエキシマランプからの紫外線(hν= 7.2 eV)のスペクトル形状を中央部、そして、紫外線が合成石英窓、CH4とArガスにより吸収されないでSi基板表面に到達できることを左上の模式図に示す。




図3:SiO2(350 nm)/Si(001)基板表面でのArプラズマの放電電流のバイアス電圧依存(赤丸)を、Si表面でのもの(青丸)と比較して示す。基板温度は200℃、Arガス圧力は30 Paである。SiO2(350 nm)/Si(001)基板表面について、真空中で測定した光電子電流(黒丸)も比較のために示す。紫外線照射による基板表面からの光電子を用いて直流放電を制御する反応機構の模式図を右上に示す。用いた紫外線(= 7.2 eV)がSiO2により吸収されず、SiO2表面から光電子放出はSi表面のものと同程度観察され、SiO2(350 nm)/Si(001)基板表面についても3インチサイズにわたって光電子制御Arプラズマを生成できた。




図4:楊猛君への実験引き継ぎ説明のとき光電子制御プラズマCVD装置の前にて(2011/3/3)。




図5:SPring-8のビームラインBL43IRでの共同利用実験において赤外吸収分光装置の前にて(2010/12/16)。


修士研究を振り返って:

 地震により、只今準備中。




穂積 英彬

『Si1-xCxとSi1-xGex合金表面での極薄酸化膜形成機構の研究』(修士論文、平成22年度:現在、古河電気工業株式会社)

 次世代CMOSゲートスタックのための極薄SiO2膜形成機構を解明することを目的として、Si1-xGexとSi1-xCx合金層/Si(001)表面の酸化反応過程を高輝度放射光によるリアルタイム光電子分光で観察し、酸化膜成長への不純物原子GeとCの役割、そして、酸化によるGeとC原子の挙動への影響を調べた。500℃酸化では清浄Si(001)2×1表面の酸化速度に比べて、Si1-xGexで少し遅く、Si1-xCx合金層で少し速くなることを観察した。このとき、どちらの合金層でもGeとC原子は酸化されることなく、また、GeOもしくはCO/CO2で脱離することもなく、Ge原子は内部に拡散してSiO2/Si界面に留まり、C原子は酸化誘起濃縮によりSi1-xCx合金層から3C-SiC核発生へと相転移した。これらの結果は酸化誘起歪みによる点欠陥発生を介した統合Si酸化反応モデルを拡張して、ダイマー誘起歪みと酸化誘起歪みによるSi表面とSiO2/Si界面での不純物固溶度の増加、そして酸化誘起点欠陥を介してのCとGe拡散を取込むことで、観察された結果を相補的に説明した。

キーワード:CMOSゲートスタック、極薄SiO2膜形成、酸化誘起歪み、点欠陥発生、リアルタイム光電子分光、統合Si酸化反応モデル

2009年12月7日 穂積英彬君がALC'09 Student Awardを受賞




図1:酸化実験に用いたSi1-xGexとSi1-xCx合金層形成の模式図。Si1-xGex合金層は、Si(001)表面に室温でGeを0.24 nm堆積後に660℃に加熱処理して形成した(左)。Si1-xCx合金層はSi(001)表面を640℃でエチレン(C2H4)に暴露することにより形成した(右)。表面近傍のみにそれぞれの合金層が形成される原因は、Si(001)2×1表面のダイマー誘起ひずみにより表面から数層のみでGeとC原子の固溶度が増加するためである。




図2:Si1-xGex合金層/Si(001)表面の酸化反応におけるO 1s、Si 2p、Ge 3d光電子スペクトルの時間発展の比較。基板温度500℃、酸素圧力6.6×10-5 Pa。それぞれの光電子スペクトルは5秒、63秒、53秒で繰返し測定された。




図3:Ge 3d光電子強度(酸化されていないGe成分)をSi 2p光電子強度(Si基板からの成分)で規格化した比の時間発展。酸化初期に少しの増減が見られるものの、ほぼ一定である。このことは模式図に示すように、酸化にともないSi酸化膜のみが成長し、Ge原子は全く酸化されずに、また、GeOとして脱離することもなくSiO2/Si界面にとどまっていることを示唆している。




図4:BL23SU/SPring-8(兵庫県佐用町)にて共同利用実験(72時間連続でのリアルタイム光電子分光観察)の昼番担当のとき(2010/12/18)。




図5:BL23SU/SPring-8(兵庫県佐用町)の表面化学反応解析装置(SUREAC2000)の前にて(2010/12/18)。


修士研究を振り返って:  

地震により、只今準備中。




尾白 佳大

『光電子制御プラズマCVDによる炭素系薄膜成長機構の研究』(卒業論文、平成22年度:現在、東北大学大学院生)


 LSI多層配線のための炭素系薄膜合成プロセスの開発を目的として、光電子制御プラズマCVDによる多層グラフェン成長のキャリアガス依存をArとH2を用いて調べた。ラマン分光観察によるグラファイト粒子の大きさはArとH2でほぼ同じ傾向を示し、900℃で~13nmから400℃で~7 nmまで減少した。このとき赤外吸収分光からAr希釈CH4を用いた成長では900℃付近の高温ではC-H結合がほとんど見られないが、温度を低下させるとC-H結合が顕著に増加することを観察した。さらに、キャリアガスをArからH2に変えることによりC-H結合を減少できることを見いだした。これらの実験結果から、CVD成長多層グラフェン薄膜への水素取り込みの反応モデルを提案した。

キーワード:光電子制御プラズマCVD、炭素系薄膜、キャリアガス依存、水素含有量




図1:集積回路のCu多層配線における問題と、その解決のための代替材料としての炭素系薄膜の特徴。右下の多層配線モデルに示されるように、縦方向のビア配線はカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube: CNT)横配線は多層グラフェンが期待されている。Cu配線では微細化にともない、Electromigrationによる断線や欠陥発生のため信頼性の低下がもたらされている。そのため、Electromigrationを引き起こす電流密度がCuのものに比べて、グラフェンで約1000倍も大きなことが注目されている。




図2:光電子制御プラズマCVDで成長した多層グラフェンの赤外吸収分光スペクトル。501℃で成長した膜には水素結合が見られるが、879℃では全く見られない。その原因として、気相から供給されたCHxラジカルがグラフェンの端に結合したとき、低温領域では水素脱離が不完全なためと考えられた(下部の反応モデル)。




図3:光電子制御プラズマCVD装置一号機の前にて(2011/5/17)。


卒業研究を振り返って:

 私は三年の頃から実験やゼミを行っていたので、研究内容自体はほとんど理解しているつもりでいた。実際に論文を書き始めてみると、自分の知識や理解はとても浅いことがわかり、論文という形にまとめるためには多大な努力が必要であることを自覚した。前年まで研究をしていた先輩の論文や研究に関連する文献を読み、今までのゼミの内容を復習しながら、自分の行ってきた実験と今まで高桑研究室が積み上げてきた研究成果のレビューを行った。また、わからない点や疑問に思う点などは、助教の小川先生や諸先輩方に細かくきき、一つ一つ解決していきました。
 私の研究はまだまだ内容が浅く、深めていく余地が多く残されています。今回の卒業論文を通して身に付けた知識と経験をもとに、修士課程では更に研究を重ねていこうと思います。
   (尾白佳大、2011/5/16)