東北大学多元研 高桑研究室 本文へジャンプ

博士・修士・卒業論文の要旨



坂本仁志

『SiH2Cl2ガスソース分子線エピタキシー法における表面反応素過程の研究』(博士論文、平成7年度)

 超高密度集積化において必要とされるSi気相成長プロセス温度の低温化のために、ジクロロシラン(SiH2Cl2)用いたSi気相成長中の表面反応過程を 放射光によるX線光電子分光(BL-11D, Photon Factory)、He-I共鳴線による紫外光電子分光、オージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)で「その場」観察した。 最初に、結晶成長中のSi(001)表面の水素と塩素被覆率の温度依存を明らかにし、SiH2Cl2吸着・脱離の表面反応モデルを提案した。 成長温度の低温化のために塩素脱離の解明と制御が重要となるので、脱離種としてSiCl2、SiCl、HClの等温脱離を調べ、原子スケールの表面反応モデルを構築した。 塩素脱離を促進させるために、急昇温度プロセス(Rapid Temperature Process:RTP)と光照射による塩素脱離への効果を解明した。

キーワード:Si気相成長、Siエッチング、ジクロロシラン、ガスソース分子線エピタキシー、UPS、RHEED、放射光、「その場」観察




図1:Si(001)-0ooff表面に600℃,1×10-6 TorrでSiH2Cl2を飽和吸着させ、 ~1800秒後にSiH2Cl2ガスと排気すると同時に、基板温度を昇温させ等温脱離を行なったときのCl-3p光電子強度の時間発展。




図2:Si(001)-0ooff表面からの塩素等温脱離過程における塩素被覆率θClの時間発展。実線は塩素脱離の一次反応モデルを用いたシミュレーション。 θClに依存して、二つの塩素脱離領域A, Bが見られる。




図3:Si(001)-0ooff表面からの塩素等温脱離のA領域における反応係数のアレニウスプロット。塩素脱離の活性化エネルギーは48.1 kcal/molと求まった。




下敷領 文一

『RHEED-AES法による半導体へテロ界面のその場観察に関する研究』(博士論文、平成7年度:現在、シャープ株式会社)

 半導体ヘテロ界面形成プロセスの解明と制御のために、ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)と組 み合せたAl合金製複合表面解析装置を開発し、オージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折(RHEED-AES)を用いて、 酸化膜/Si(001)、3C-SiC/Si(001)、Ag/Si(111)、H/Si(001)界面を調べた。Al複合表面解析装置の中でも、Al合金製液体窒素シュラウド付きクライオパネルとチタンサブリメーション、 GSMBE用のガスドーザとそのガス供給制御系、オージェ電子分光用の電子エネルギー分析器とその測定制御系の開発を行った。 H/Si(001)表面のRHEED-AES観察から、斜入射電子ビームを用いるRHEED観察条件で測定されたオージェ電子スペクトルは、Signal-to-Noise比とSignal-to-Background比が十分に大きく、 また、表面感度がオージェ電子の脱出深さだけでなく、入射電子の侵入深さにも強く依存することを明らかにした。そのため、酸化膜/Si(001)、3C-SiC/Si(001)、 Ag/Si(111)界面からのオージェ電子スペクトルを電子ビームの入射角度を変えて測定することにより、界面深さ方向の化学組成/結晶構造の情報が得られることが分かった。




図1:ガスソースMBE機能付きAl合金製複合表面解析装置の真空排気系のブロック図と排気特性。




図2:ガスソースMBE機能付きAl合金製複合表面解析装置の全体写真と、液体窒素シュラウドの組立。




図3:Si(111)√3×√3-Ag表面のSi LVVとAg MNNオージ電子スペクトル




図4:Si(001)2×1表面のSi LVVオージェ電子スペクトルへの水素吸着効果。




森 優治

『ガスソースMBE法によるダイヤモンド成長の研究』(修士論文、平成7年度:現在、三菱重工株式会社)

 ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)によるダイヤモンド気相成長の表面反応機構を解明するために、 飛行時間型質量分析と組み合せた電子刺激脱離(Electron-stimulated Desorption: ESD)の実験システムを開発し、高圧合成ダイヤモンドC(001)表面での水素吸着・脱離反応過程を「その場」観察した。 ESDのためにはRHEED観察用の斜入射電子ビームを用い、電子銃出口に設置された平行平板電極で電子ビームを偏向させ、ダイヤモンド表面を電子照射するタイミングを制御した。 ESD脱離イオンのTOFスペクトルの解析から、H+やCxHy+脱離種を同定した。このようにRHEEDとESDを組み合せたことにより、 ダイヤモンド表面の構造と水素吸着を一緒に「その場」観察することを可能にした。




図1:飛行時間型質量分析器の組立図。




図2:水素吸着ダイヤモンドC(001)表面からの電子刺激脱離イオンのTOFスペクトルのイオン加速電圧Vc依存。




図3:水素吸着ダイヤモンドC(001)表面からの電子刺激脱離イオンのTOFスペクトルのH2圧力依存。




須山 智史


『高温Si表面のRHEED観察』(卒業論文、平成7年度)
 高温Si表面の構造変化の動的過程を解明するために、反射高速電子回折(Reflection High Energy Electron Diffraction: RHEED)のための電子銃取り付け口に、 電子ビームの急速偏向用の並行平板電極を設置し、Si表面での電子照射を高速でON/OFF可能とした。 Si(001)2×1表面への電子ビーム照射のON/OFFを繰り返すとき、(0, 0)鏡面反射スポット強度I(0, 0)をリアルタイムモニタリングしたとき、 電子ビームON後にI(0, 0)が指数関数的に急激に減少し、その後OFF期間が長い程ON時に見られるI(0, 0)の回復が大きいことを見いだした。 これからRHEED観察用電子ビームの照射により、Si(001)2×1表面の構造乱れが引き起こされること、その原因としてSi-Siダイマー結合の切断が示唆された。 また、UPS用の2段差動排気付き希ガス放電管の設計、そして、Si基板温度を急速変化させるための直流電源の制御プログラムを開発した。




図1:800℃に加熱したSi(001)2×1表面のRHEED回折パターン。




図2:RHEED観察用斜入射電子ビームのON/OFFにともなう(0, 1/2)回折スポット強度の時間発展。 斜入射電子ビームのOFF時間は5, 10, 20, 30, 40, 60, 100, 200秒であり、ON時間は600秒である。




図3:上図のOFF期間10秒後の(0, 1/2)回折スポット強度の時間発展と、その近似曲線。




小野寺 正徳

『ガスソースMBEによるダイヤモンドの成長に関する研究』(修士論文、平成6年度)
 ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE)によるダイヤモンド気相成長機構の解明を目的として、 飛行時間型質量分析と組み合せた電子刺激脱離(Electron-stimulated Desorption: ESD)のためのドリフトチューブと飛行時間測定回路、水素ラジカル源、 ダイヤモンド試料の加熱回路の開発を行い、高圧合成ダイヤモンドC(001)表面での水素吸着・脱離反応過程における水素被覆率を調べた。 ESD用の電子ビーム照射条件、脱離イオンの加速条件などを系統的に調べ、飛行時間質量分析の測定条件を最適化した。 水素飽和吸着ダイヤモンド表面からの水素脱離過程を「その場」観察することにより、H+イオンだけでなくCxHy+イオンも脱離することから、表面にはいくつかの水素吸着状態が存在することが示唆された。




図1:飛行時間質量分析システムの測定回路構成図。




図2:水素吸着ダイヤモンドC(001)表面を1000℃で加熱したときのTOFスペクトルの時間変化。




田中 洋彦

『高温Si表面上でのエッチングの「その場」観察』(卒業論文、平成6年度)

 塩素による高温Si表面でのエッチング反応機構を解明するために、AgCl結晶の電気分解による塩素源を設計・製作・調整した。 この塩素源では、Si基板表面に向かって局所的に塩素を供給できるので、反応槽の排気ポンプに加わる負荷が少なく、電子エネルギー分析器などの塩素付着も抑制することができる。 塩素発生量は電気分解用の直流電流(試料温度)で制御でき、直流電流(試料温度)に対して指数関数的に増加すること、さらには±8%で安定していることを観察した。 ただし、Cl2分子だけでなくCl原子も発生することも分かった。また、通電加熱でSiウェハをアニールするための試料ホルダーも開発した。




図1:AgCl結晶の電気分解に基づく塩素ガス発生の原理図。




図2:塩素ガス発生源の組立図。




図3:四重極質量分析装置で測定した塩素原子のAgCl温度依存。




堀江 哲弘

『シリコン熱酸化膜の構造に関する研究』(修士論文、平成5年度)

 Si表面酸化による極薄シリコン酸化膜形成機構を解明するために、紫外光電子分光(UPS)と反射高速電子回折(RHEED)を用いて、 Si(001)表面での酸化膜の形成・分解反応過程を「その場」観察した(図1)。 O 2p光電子強度の時間発展のO2圧力依存から(図2)、パッシブ酸化(Passive Oxidation)からアクティブ酸化(Active Oxidation)への相転移条件を調べ、 その臨界O2圧力のアレニウスプロットから、活性化エネルギーが67 kcal/molと求まった(図3)。 O 2p光電子強度とダイマー未結合手に起因する表面電子状態の光電子強度の時間発展の相関から、極薄SiO2膜の形成及び分解過程における表面形態モデルを提案した。 そして、RHEED観察から、700℃付近での高温Si酸化では界面が顕著に荒れるが、その酸化膜の分解過程では界面荒れが著しく平坦化されることを観察した。




図1:Si(001)2×1表面の酸化膜形成/分解反応過程における価電子帯光電子スペクトル。 非弾性散乱によるバックグランドは除去されている。基板温度は730℃、O2圧力は9.0×10-7 Torrである。




図2:Si(001)2×1表面の酸化膜形成/分解反応過程におけるO-2p光電子強度の時間発展の基板温度依存。 770℃では酸化膜成長が見られず、Si表面酸化反応様式が約665℃でpassive oxidationからactive oxidationへと相転移したことが分かる。




図3:Si表面酸化反応様式がpassive oxidationからactive oxidationへと相転移する(O2圧力、温度)のアレニウスプロット。 高温・低O2圧力領域では酸化膜が形成されず、SiO脱離によるエッチングが優先的に進行する。低温・高O2圧力領域ではSiO脱離なしで酸化膜形成が進行する。





森 優治

『分子線エピタキシー用蒸着源と水素ラジカル源の製作』(卒業論文、平成5年度:現在、三菱重工業株式会社)

 原子スケールでの薄膜成長機構の解明と制御のために、オージェ電子分光と組み合せた反射高速電子回折と紫外光電子分光のための機能を備えた 複合表面分析装置に取り付ける、Si及びGe, Sn蒸着用の蒸着源、さらには水素ラジカル源を開発した(図1)。 Si蒸着源は、Si基板の通電加熱によるサブリメーションで蒸着させるので、Si基板温度を光学/赤外線パイロメータで測定するための覗き窓とシャッター制御のための回転導入端子が取り付けられている(図2)。 Ge, SnはWバスケットに入れて加熱蒸着し、蒸着速度を測定するために水晶振動子膜厚モニターと、シャッター制御のための回転導入端子が取り付けられている(図3)。 水素ラジカル源は、セラミックパイフに内蔵されたWコイルを約2000 Kに加熱することで水素ラジカルを生成し、セラミックパイプ先端からビーム状に水素ラジカルを供給できる。




図1:リアルタイムRHEED-AES観察のための複合表面分析装置の各機器の構成。




図2:Si蒸着用の蒸着源の図面。




図3:Ge, Sn蒸着用の蒸着源の図面。




堀 仁一

『放射光励起シリコン単結晶薄膜成長に関する研究』(修士論文、平成4年度:現在、日立製作所株式会社)

 放射光励起によるシリコン単結晶薄膜成長の表面反応機構を解明するために、放射光(BL-11D, Photon Factory)と He-I共鳴線を用いた光電子分光、そして反射高速電子回折を用いて、Si(001)表面でのジクロロシラン(SiH2Cl2)の解離吸着反応過程を「その場」観察した(図1, 2)。 塩素と水素被覆率の温度依存から、SiH2Cl2解離吸着反応モデルを提案した(図3)。 さらに、白色放射光によるSi-LVVオージェ電子スペクトルから表面状態と吸着水素の情報が得られることが分かった。 SiH2Cl2吸着Si(001)表面からの白色放射光照射による水素/塩素の光刺激脱離(Photon-stimulated Desorption: PSD)による表面状態変化を、 表面反応励起用の放射光により放出されたSi-LVVオージェ電子スペクトルを用いて「その場」観察できることを明らかにした。




図1:SiH2Cl2ガス雰囲気中で結晶成長中のSi(001)表面の価電子帯光電子スペクトルの基板温度依存。SiH2Cl2圧力は1×10-6 Torrである。




図2:SiH2Cl2ガス雰囲気中で結晶成長中のSi(001)表面のRHEED回折パターンの基板温度依存。SiH2Cl2圧力は1×10-6 Torrである。




図3:SiH2Cl2ガス雰囲気中で結晶成長中のSi(001)表面での水素と塩素の被覆率、そして、SiH2Cl2解離吸着反応の温度依存。




佐藤 靖史

『紫外光励起水素を用いたシリコン気相成長に関する研究』(修士論文、平成4年度)

 紫外光励起水素を用いたシリコン気相成長プロセスを開発するために、低圧水銀ランプを用いたキャリア水素ガスの紫外線照射装置を製作し、 ジクロロシラン(SiH2Cl2)によるSi(111)表面への気相成長におけるSi成長速度と結晶欠陥発生への紫外線照射効果を調べた。 成長欠陥、とりわけ積層欠陥はSi(111)-0ooff表面で見られるピラミッド状丘を用いて観察した(図1)。 積層欠陥はSi基板温度を低温にすると指数関数的に増加するだけでなく(図2)、SiH2Cl2モル濃度を増加させると著しく増加することを観察した。 成長速度は前者で減少するが、後者では増加している。この結果から、積層欠陥は基板の汚染や損傷によって生じるだけでなく、 主には気相成長中のSi表面状態により発生することが明らかとなり、具体的には表面吸着塩素が指摘された。そして、紫外線照射による積層欠陥発生とSi成長速度への影響が、 SiH2Cl2モル濃度に依存して変化することが示された。




図1:CVD成長したSi(111)-0ooff表面の微分干渉顕微鏡写真:as-grownとetched表面の比較。as-grown表面に見られる頂点が平坦なピラミッド状丘はエッチングすると、 その頂点位置に三角形のエッチピットが存在し、積層欠陥を核として異常成長したことを示している。言い換えれば、 頂点が平坦なピラミッド状丘を用いてエッチングなしで積層欠陥の発生頻度を調べることが可能になる。




図2:Si(111)-0ooff表面でのCVD成長における、頂点が平坦なピラミッド状丘密度と成長速度のアレニウスプロット。SiH2Cl2モル濃度は1.3×10-4 mol/minである。




図3:Si(111)-0ooff表面でのCVD成長における、頂点が平坦なピラミッド状丘密度と成長速度のSiH2Cl2モル濃度R依存。成長温度は950℃である。




飯田 仁

『GaAs硫黄保護膜形成と低温除去』(卒業論文、平成4年度:現在、富士通株式会社)

 GaAs硫黄保護膜形成と低温除去プロセスを開発するために、DCMA型電子エネルギー分析器を備えた複合表面解析装置(図1)を用いて、 (NH4)2Sx処理したn型とp型GaAs(001)表面を放射光によるX線光電子分光(BL-11D, Photon Factory)で調べた。 白色放射光照射による表面状態の変化をXPSで「その場」観察し、光照射により室温でもGaAs表面から硫黄を顕著に除去できるが、Ga-S結合は減少するものの、 As-richとなるだけでなくAs-S結合も増加することが分かった。また、水素ラジカルを照射させることによりAs-S結合を減少できることが分かった。




図1:DCMA型電子エネルギー分析器を備えた複合表面解析装置のブロック図。




図2:(NH4)2Sx処理したn型GaAs(001)表面の白色放射光照射にともなうAs 3d光電子スペクトルの変化。励起光エネルギーは90 eVである(BL-11D, Photon Factory)。




図3:(NH4)2Sx処理したn型GaAs(001)表面の白色放射光照射にともなう価電子帯光電子スペクトルの変化。励起光エネルギーは50 eVである(BL-11D, Photon Factory)。




小野寺 正徳

『パルス状ガス導入による半導体薄膜成長』(卒業論文、平成4年度)

 パルス状ガス導入による半導体薄膜成長プロセスの開発を目的として、ガスソース分子線エピタキシー(Gas-source Molecular Beam Epitaxy: GSMBE) のために用いるガスドーザ(マイクロ・キャピラリー・アレイによりほぼ平行ビームとして原料ガス分子を基板表面に供給することとで、 表面でのガス圧力を局所的に増加)のガス供給と真空排気のバルブの圧縮空気用電磁弁の制御回路を開発した。 複数のガスドーザの動作時間とタイミングを独立に制御できるようにした(図1)。 また、ダイヤモンドC(001)とSi(001)表面へのRHEED観察用電子ビームの照射効果を調べた。 ダイヤモンドC(001)表面へRHEED観察用電子ビーム照射開始後に、(0, 0)鏡面反射スポット強度が急速に減少する減少を見いだし、 その減少の程度は基板温度を上げると小さくなることを見いだした(図2)。 さらに、電子ビームのOFF期間を長くすると、(0, 0)鏡面反射スポット強度の回復が大きくなることを観察した。 このことは、電子照射によりダイヤモンド表面構造が容易に乱されることを示している。




図1:パルス状ガス導入制御システムのブロック図。




図2:高圧合成ダイヤモンドC(001)表面へのRHEED観察用斜入射電子ビーム照射開始後における、(0, 0)鏡面反射スポット強度の時間発展の基板温度依存。




図3:高圧合成ダイヤモンドC(001)表面へのRHEED観察用斜入射電子ビーム照射開始後における、(0, 0)鏡面反射スポット強度の時間発展。 RHEED観察途中で電子ビームをt = 10, 20, 40, 80, 160, 320秒間OFFにした。




竹村 浩

『紫外光励起水素を用いたシリコン気相成長に関する研究』(修士論文、平成4年度)

 高効率紫外光源を用いたシリコン気相成長プロセスを開発するために、高周波誘導加熱型CVD装置に備え付けられているH2キャリアガスへの 紫外線照射部の改造を行った(図1)。 従来のものでは低圧水銀ランプを4本使用していたが、H2キャリアガスの合成石英パイプが見込む立体角の割合しか紫外線を利用できなかったが、 それぞれをAl合金製の楕円ミラーの焦点に配置することによる、同じランプでも紫外線の照射強度を高めることができる(図2)。 この原理に基づくランプハウジングを設計し、組立・調整を行い(図3)、CVD装置に組込んだ(図4)。 この改良型ランプハウジングを用いて、ジクロロシラン(SiH2Cl2)によるSi(111)表面への気相成長において、成長速度と欠陥発生への紫外線照射効果を調べた。




図1:大気圧CVD装置の主要構成図:紫外光照射部、ガス混合部、高周波誘導加熱による結晶成長部。




図2:4本の低圧水銀ランプから構成される紫外光照射部の断面図。 (a) 従来型では内面バフ研磨されたSUS304容器の内側でおきる反射は無視できる程度であった。 (b) 改良型ではAl反射板で形成された楕円面の一つの焦点位置に低圧紫外線ランプが置かれ、もう一つの焦点位置にはH2キャリアガスが流れる石英管が置かれている。




図3:改良型の紫外線照射部の組立て途中の写真。




図4:改良型紫外線照射部を組込んだ大気圧CVD装置の全体写真。