東北大学多元研 高桑研究室 本文へジャンプ

トピックス/新聞記事/受賞


最近の研究成果


新聞などでの報道



受賞



最近の研究成果



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新聞などでの報道


2010年5月10日 Tech on!に研究紹介記事掲載


Tech on!(日本経済新聞社インターネット版)2010年5月10日号にCREST二瓶グループの研究成果が取り上げられました。この研究成果は、IITC2010(サンフランシスコ、米国)で詳しく発表いたします。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100510/182415/

記事のPDFファイルはこちら



2010年4月 IITCプレスリリースで紹介


IITC2010(International Interconnect technology Conference)のプレスリリースにて取り上げられました。

http://www.btbmarketing.com/iitc/
http://www.btbmarketing.com/iitc/Image_Captions_2010/Paper%2011-2,%20Interconnects%20For%20Graphene,%20Fujitsu.doc



2010年2月 CREST領域ニュースに研究紹介掲載


CREST領域ニュースに研究活動の様子が紹介されました。
東北大学の光電子制御プラズマCVD装置の写真が掲載されました。



(クリックするとPDFファイルがダウンロードできます)



2006年11月21日 河北新報に研究内容の紹介


2006年11月21日の河北新報朝刊に、ダイヤモンド気層合成の研究活動が『研究ノート拝見』として紹介された。





1999年9月30日 まなびの杜に研究紹介


1999年9月30日発行の「まなびの杜(1999年秋,No.9)」に、ダイヤモンド気相合成の研究が紹介されました。

http://web.bureau.tohoku.ac.jp/manabi/manabi9/mm9-3.htm


(クリックで拡大)



受賞


2017年3月10日多賀稜君が日本表面科学会東北・北海道支部学生講演賞を受賞


受賞対象論文
多賀稜、小川修一、桑雄二
「水素暴露による酸化Ni(111)表面還元過程のリアルタイム光電子分光観察」
賞の概要
 第一著者として口頭発表およびポスター発表した学生の中から優秀な学生の講演を表彰し、研究意欲を高めることを目的とする。
賞状/副賞
 

業績の要約
自動車エンジンのピストンシリンダ内では燃焼時に、空気中のN2が酸化されNOXが生じるため、貴金属元素を用いた触媒で還元し浄化されている。しかし、貴金属は資源の枯渇により価格がさらに高騰する可能性があり、その使用量削減が急務となっている。そこで本研究では埋蔵量が多く比較的安価であり、NOに対し触媒作用を持つNiに注目した。Niは表面が酸化されると触媒能を失うことが知られているが、表面の酸素を効率的に脱離させることができれば触媒応用が期待できる。本研究では、酸化Ni表面の水素暴露による還元初期過程をリアルタイム紫外線光電子分光(UPS)により観察し、表面酸素の挙動を検討した。  下図に、本研究により得られた、500℃でのO 2p強度および仕事関数の時間発展を示す。水素暴露により、O 2p強度は緩やかに減少し、その後急減している。一方、仕事関数はほぼ変化せず、その後急減に転じている。このように変化は2つの領域に分かれており、前者は酸素原子の表面析出により最表面での酸化状態に変化が見られない潜伏期間、後者は還元が進行し清浄Ni表面が島状に拡大する反応期間であると考えられる。また、水素供給終了後のO 2p強度および仕事関数の値は、清浄Ni(111)表面での値(青破線)と良い一致を示しており、今回の還元条件により完全に還元されたと考えられる。さらに、試料温度を300℃、100℃で行った実験結果から、還元過程には温度依存性があることを見出した。





2015年7月10日阿加賽見さんがISSP2015 Best Poster Award を受賞


受賞対象論文
Saijian Ajia, Yuki Kotanigawa, Yudai Ohtomo, Shuichi Ogawa, and Yuji Takakuwa
「Ion incident energy dependence for Cu surface smoothing using Ar+ ions generated by photoemission-assisted plasma」
賞の概要
138名のポスター講演者の中から優秀な発表をした若手講演者3名を選出し受賞する。
賞状/副賞
 

業績の要約
最先端の自動車、情報機器や電子デバイスを支えるものづくり技術がマイクロ・ナノ加工である。電子デバイスだけでなく、光学、医療などの分野にもマイクロ・ナノ加工のニーズが増加し、原子レベルの平坦性が要求されている。しかしながら、従来の加工手法では加工寸法が1μm以下になると、固体の工具を使用することが困難になることから、放電加工、レーザー加工、イオンビームなどのエネルギービームを用いる加工法の使用が拡大している。このような原子レベルの超平坦化面を実現する数少ない手段の一つが、本研究室によって開発された光電子制御プラズマ(Photoemission-assisted plasma: PAP)イオンソースである。これまでにラングミュアプローブ法を用いてPAPの空間電位と電子温度などの平坦化への応用となる指標の測定を行った。そしてこれらの指標から得られたPAPイオンエネルギーはEi = 0.1 ~ 100 eVと分かった。過去の文献において報告されている平坦化への低Eiは200 eV ~ 1 keVに比べてかなり低いことと、更にこれまでに産業における多様なイオンソース作製法で低Ei 抽出が難しい現実から、PAPイオンソースは平坦化プロセスには有用であると考えられる。そこで、今回の発表ではPAPイオンソースを用いて金属薄膜Cu (200 nm)/SiR基板における入射イオンEi依存の表面平坦化を行った。下図(a)にはEi = 10 eV のPAPグロー放電処理では、Rqが75.3 nmから219.3 nmまで増加し、表面に突起物ができた。これはイオン衝突によるスパッタ効果が主導的な現象によると考え、Ei = 10 eVにおけるPAPのスパッタ率を求めた結果、低エネルギーである10 eVでもスパッタ効果があると分かった。これは入射エネルギーの分散によるものだと考えられる。一方、下図(b)にはEi = 3.2 eV のPAPタウンゼント放電処理では時、Rqが85.82 nmから38.86 nmまで減少し、これは低エネルギーイオン衝突による表面原子のスパッタではなくマイグレーション促進による平坦化されたと考え、Ei = 3.2 eVにおけるスパッタ効果を調べた結果、Ei = 3.2 eV のPAPタウンゼント放電ではスパッタ効果がないことが分かったが、マイグレーション効果が直接な証明はできなかった。   以上の結果より、PAPイオンソースの金属表面での平坦化メカニズムの解明に重要な知見であり、これからはマイグレーション促進の解明の上、原子レベルの平坦化プロセスの開発ができると期待される。




2015年3月10日尾白佳大君が表面科学会東北支部学生賞を受賞

受賞対象論文
尾白佳大、小川修一、室隆桂之、高桑雄二
「CVD 多層グラフェンの XAFS と XPS による解析:結晶配向性と電気抵抗率の相関」
賞の概要
第一著者として口頭発表およびポスター発表した学生の中から優秀な学生の講演を表彰し研究意欲を高めることを目的とする。
賞状/副賞
 
業績の要約
 大規模集積回路の配線材料として応用可能な多層グラフェンの成長法として光電子制御プラズマCVDによるSiO2/Si基板上への無触媒成長を推進してきた。従来プロセスと比較しチャンバー汚染を抑制し触媒剥離過程を省略できる代わりに、結晶粒の配向がランダムかつ粒径が~10 nm程度と小さく、高配向熱分解黒鉛(HOPG)と比較して凡そ100倍程度の抵抗率を有している。本研究では多層グラフェンのナノ結晶粒同士の電気的なネットワークを改善し低抵抗化を実現することを目的として結晶配向性と電気抵抗率の相関を調べ、粒界の制御から低抵抗化を実現する方策を検討した。  成膜にはCH4/Arおよび(CH4+CO2)/Arの二種類のガスを用いた。CH4/Arを用いて成膜した多層グラフェンは成長とともに配向性を示すσ*/π*強度比が増大し、結晶粒配向性が水平からランダムになっていた。このとき薄膜の抵抗率は成長とともに低減し、薄膜表面の水平方向の伝導パスに加え、膜厚方向の伝導パスが加わることで低抵抗化が起きたと考えられる。一方で(CH4+CO2)/Arにおいてはσ*/π*強度比が前者よりも小さいにも関わらず抵抗率が低くなり、配向性以外の膜質の変化が示唆された。そこでX線光電子分光により得られたC 1s内殻軌道のピーク分離解析を行うと、伝導性に寄与するsp2成分の顕著な変化が見られず、エッジに寄与するdefect成分が減少し、π-π*のsatellite成分が増大していた。この結果は結晶粒界が炭素のsp2成分以外で架橋され欠陥準位によるπ電子のトラップが起きにくくなった事を示唆している。そこで我々はCOCエステル結合による架橋構造がナノ結晶粒同士を架橋し伝導パスとして機能していると考えた。  以上の結果は表面反応を応用した薄膜機能制御の重要な知見であり、次世代の大規模集積回路の配線材料の開発に寄与している。HOPGに近づく更なる低抵抗化が期待される。




2014年9月10日 尾白佳大君がThe US Navy Award for Researchers of the Future Poster Awardを受賞

受賞対象論文
Y. Ojiro, S. Ogawa, M. Sato, M. Nihei, Y. Takakuwa
「Decrease mechanism of the resistivity of networked nanographite grown by photoemission-assisted plasma-enhanced CVD using CH4/Ar and CH4/H2」
賞の概要
 218名のポスター講演者の中から将来を担う3名の若手講演者を選出し受賞する。
賞状/副賞
 

業績の概要
光電子制御プラズマCVDによるネットワークナノグラファイト(NNG)の気相成長法は低温かつ基板面積に依らない上に金属触媒を必要としないため、次世代の大規模集積回路の配線応用に有力な手法といえる。デバイス応用に向けてNNGの抵抗率を低減させるためには、原料ガスに含まれるCH4の水素原子を脱離し膜中への混入を防ぐ必要がある。そこで本研究ではH引き抜き反応による膜中H濃度の低減効果を検討するため、CH4/ArおよびCH4/H2を用いて成長を行い発光分光法による気相中のラジカル、ラマン分光法による結晶粒径、SIMSによる膜中H濃度、四端子法による抵抗率の比較を行った。  成長条件は各々のプロセスガスにおいて最適化されており成長時間は放電電流×時間で得られる総電荷量によって制御されている。CH4/H2を用いて成膜したNNGの成膜効率はCH4/Arよりも~3倍程度高く気相中のHラジカルに依るかい離過程がラジカル密度の増大を引き起こしている可能性が示唆された。発光分光によりプラズマ中の活性種を観察すると、CH4/H2では成膜に寄与するCHラジカルの発光強度がCH4/Arよりも強く観察され、CH4のかい離過程がArよりも進み、より水素原子が少ない炭化水素ラジカルによって成膜が起きている事が示唆された。結晶粒径で規格化された抵抗率を比較するとArにおいては~104 μΩ・cmであるのに対し、H2は~103 μΩ・cmであり1桁の差が見られた。SIMSによる元素分析を行ったところ、H2のH濃度がArの約1/3になっており優位な差が観察された。これら結果からH2キャリアガスを用いてH引き抜き反応を起こし膜中Hの低減によるNNGの低抵抗化が起きたと考えられる。  以上の結果はデバイス応用に向けた手法でNNGの低抵抗化を実現した点において重要な知見であり、炭素表面においてもH引き抜き反応が起きることを示唆した点においても重要である。更なる低抵抗化が期待される。




2013年12月5日 林広幸君が応用物理学会東北支部講演奨励賞を受賞



受賞対象論文
林広幸、鷹林将、楊猛、小川修一、尾辻泰一、高桑雄二
「グラフェンチャネルFET用DLC膜の誘電率制御」

賞の概要
応用物理学会東北支部の学術講演会において, 応用物理学の発展に貢献しうる優秀な一般講演論文を発表した若手会員に対し「東北支部講演奨励賞」を授与し,その功績を称えることを目的とする。


賞状/副賞


業績の要約
グラファイトの単層膜であるグラフェンは、その特異な線形分散性により、電子・正孔両キャリアの挙動が対称で、かつ有効質量ゼロの超高移動度を示す。そのためグラフェンは、テラヘルツ級動作およびテラヘルツレーザー発振可能な電界効果トランジスタ(FET)型デバイスのチャネル材料として期待されている。しかしながら、炭素質であるグラフェンは本質的に酸化ダメージを受けやすく、Al2O3やHfO2などの酸化物高誘電率膜をFETのゲート絶縁膜とすることは困難である。 そこで著者らは、同じ炭素材料であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)のゲート絶縁膜への適用を提案している。DLCは、sp2炭素、sp3炭素、水素が混在したアモルファス炭素材料である。著者らは、DLC成膜に「光電子制御プラズマCVD」という独自手法を用いてグラフェン上への直接成膜に成功した。本研究では、光電子制御プラズマCVDのタウンゼント放電によりDLCを成膜する際のアルゴン(Ar)/メタン(CH4)流量比を変えることによるDLCの比誘電率の変化を調べ、絶縁破壊電界測定、ラマン分光解析からその要因を考察した。  図1 にタウンゼント放電で成膜したDLC の比誘電率と絶縁破壊電界の関係について示した。CH4 濃度が上昇するにつれて比誘電率は上昇し、最終的に7.8 という高誘電率を得た。絶縁物の比誘電率を議論する際には式(1)に表わしたLorentz relation が使われる。 F(E,к)=E+(P(E,к))/(3ε_0 ) Lorentz relation から、分極電荷(P)が増大すると、外部から印加した電場(E)が小さくてもDLC 内部の電場(F)が増大することが分かる。すなわち絶縁破壊電界が大きいと比誘電率は小さくなり、絶縁破壊電界が小さいと比誘電率は大きくなる。製作したサンプルはCH4 濃度30%以上の範囲でその関係性に従った。図2 にラマンスペクトルのD バンド、G バンドの面積比(A(D)/A(G))を示す。この値は、DLC 中のsp2 クラスターサイズに起因するものであり、成膜中のCH4 濃度が80%を超えると、比誘電率と同じく急激に上昇している。よって、CH4 濃度が80%を超えたときの比誘電率の急上昇は導電性であるsp2 クラスターの大径化により実質的な内部電界が大きくなったためと考えられる。そのため、マクロな視点ではLorentz relation に従っているように見える。 以上より、光電子制御プラズマCVD により作製したDLC の比誘電率はAr、CH4 の流量比を変えることにより3.7 から7.8 まで制御可能であることが分かった。高い誘電率の原因として、DLC 中に含まれるsp2クラスターの大径化に起因していることが示唆された。このsp2クラスターを制御することで、低誘電率から高誘電率まで制御することができ、それぞれグラフェンFET のサイドウォール、ゲートスタックと使い分けることで超高速動作可能なトランジスタの作製が期待できる。


図1 成膜中のCH4ガス濃度と比誘電率、絶縁破壊電界の関係

図2 成膜中のCH4ガス濃度とラマンスペクトルにおけるDバンド、Gバンド面積比の関係




2013年5月24日 尾白佳大君が第33回表面科学学術講演会スチューデント部門講演奨励賞を受賞


受賞対象論文
尾白佳大、小川修一、室隆桂之、高桑雄二
「光電子制御プラズマCVDによる多層グラフェンの結晶性と電気特性:H2とArキャリアガスの比較」
賞の概要
 日本表面科学会は設立15周年を期に、若い研究者の研究意欲を啓発するために1997年の表面科学講演大会からスチューデント奨励賞を設けて表面科学の発展に貢献しうる優秀な講演論文を表彰してきました。平成16年の第24回表面科学講演大会から、より広い若手研究者を対象とするために、スチューデント奨励賞に替わる新しい表彰制度として、「講演奨励賞(若手研究者部門)」および「講演奨励賞(スチューデント部門)」を設けました。さらに、平成25年に制度の見直しを行い、今回の第34回表面科学学術講演会から、「講演奨励賞(若手研究者部門)」、「講演奨励賞(新進研究者部門)」および「講演奨励賞(スチューデント部門)」を設けることになりました。スチューデント部門は、発表年月日において学生として在籍する学生会員、発表年の途中まで学生として在籍した正会員を対象とします。
賞状/副賞
 


業績の要約
 光電子制御プラズマCVDはSiO2/Si基板上に低温かつ大面積にネットワークナノグラファイト(NNG)を形成できるため大規模集積回路の配線部に応用が期待される。NNGの低抵抗化には大粒径化とともに粒間の繋がりを改善することが重要であり、終端水素を除去することで実現できると考えた。本研究ではH引き抜き反応による膜中H濃度の低減効果を検討するため、CH4/ArおよびCH4/H2を用いて成長を行いラマン分光法による結晶粒径、SIMSによる膜中H濃度、四端子法による抵抗率の比較を行った。  成長時間は放電電流×時間で得られる総電荷量を指標とし単位電荷量あたりの膜厚を示す成膜効率を調べた。その結果CH4/H2の成膜効率はCH4/Arよりも~3倍程度高くなり、気相中のH引き抜き反応によってCH4かい離過程が進行したことが示唆された。ここで最大結晶粒径(10 nm)における抵抗率はCH4/Arが~104 μΩ・cmであるのに対し、H2は~103 μΩ・cmであり1桁の差が見られた。SIMSによる元素分析を行ったところ、H濃度がArの約1/3になっており基板表面におけるH引き抜き反応がH濃度を低減させNNGの低抵抗化を引き起こしたと考えられる。



2012年1月21日 楊猛君がゲートスタック研究会安田賞を受賞


受賞対象論文
楊 猛、小川 修一、鷹林 将、尾辻 泰一、高桑 雄二
『トップゲート型グラフェン・チャネルFET のゲートスタック用炭素系絶縁膜の合成プロセスの開発』
賞の概要
 半導体デバイスにおいて、ゲートスタックの高性能化は最も重要な研究課題の一つです。ゲート絶縁膜では、原子層レベルで膜厚や構造を制御した高品質な極薄酸窒化膜の開発や、トランジスタの高性能化と超低消費電力化を可能にする高誘電率ゲート絶縁膜の研究・開発が進められています。また歪シリコン基板やプロセス歪を利用した高移動度トランジスタや、メタルゲート電極の検討も活発に行なわれています。本研究会は、2004年まで9回にわたって開催されてきた「極薄シリコン酸化膜の形成・評価・信頼性」研究会のスコープを広げて2005年から新たにスタートしたものであり、産・官・学の第一線の研究者が基礎から応用までを理論と実験の両面から議論し、本分野の発展に貢献することを目的としています。安田賞は,特に優秀と認められ,その知見が広く半導体産業に貢献すること大であると評価された発表に授与されます。
賞状/副賞
 

業績の要約
 グラフェンは極めて高い電子移動度を示しているため、次世代の高速通信用電界効果トランジスタ(FET)への応用が期待されている。トップゲートグラフェンFETのゲート絶縁膜として、これまで利用されている SiO2やAl2O3、HfO2などの酸化物絶縁膜では、絶縁膜に含まれる酸素によるクローン散乱によってグラフェンの移動度が低下することが問題となっている。DLCは炭素と水素のみで構成されたアモルファス状の材料である。グラフェンと同じ炭素質であるため、高い化学的親和性は期待できる。従来のDLCの成膜方法としてのPVDとCVD法は容器内壁への煤が堆積及び大きいプラズマパワーに起因するグラフェンへのダメージなどの問題がある。そこで、私たちは基板表面のみにプラズマを励起する光電子制御プラズマCVDを用いたグラフェンFET用DLCゲート絶縁膜形成プロセスを提案する。光電子制御プラズマ CVD によりSi基板上へDLCを成膜し、膜の誘電率、絶縁破壊電圧及び化学結合状態などを評価した。
 図1(a)に周波数100 kHzにおける容量電圧(C- V)特性を示す。基板がn型であるため、ゲートに正の電圧を印加し蓄積状態になったときの容量をDLCの容量CDLCとし比誘電率を求めた。その結果、比誘電率は3.84と求まった。 また絶縁耐性を調べるため、絶縁破壊試験を行った。絶縁破壊試験におけるI-V特性を図1(b)に示す。約30 Vで絶縁破壊が生じ、絶縁破壊電界は6 MV/cmと求まった。これらの値は熱酸化で形成したSiO2膜には及ばないものの、 プラズマCVDで作製したSiO2の比誘電率(〜3.8)や、絶縁破壊電界(〜1 MV/cm)と比較しても遜色ない。CH4の濃度が誘電率に与える影響を明らかにするため、CH4の濃度を変えてDLC成長を行った。 誘電率の濃度依存を図2に示す。CH4濃度が増加するほど誘電率は増加し、誘電率が1.18〜4.73まで変化することが明らかとなった。それで、光電子制御プラズマCVDで形成したDLCは高誘電率が必要なゲート絶縁膜だけでなく、低誘電率が必要な層間絶縁膜にも利用できる可能性が示唆された。
図1. (a) DLC MIS キャパシタのC-V特性 (b) DLC MIS キャパシタのI-V 特性 図2. 作製したDLC膜誘電率のCH4濃度依存性




2011年5月25日 大友悠大君がALC'11 Student Awardを受賞



受賞対象論文
Yudai Ohtomo, Shuichi Ogawa, and Yuji Takakuwa
“Surface Morphology of Al, Si, and Cu Substrates Flattened by a 2”-size Photoemission-Assisted Ion Beam Source”

賞の概要
The Student Awards is designed to encourage young scientists to present their work. The award will be given to a limited number (around 10) of students.

賞状/副賞

業績の要約
 高速原子ビーム(FAB)を照射して未結合手を露出させ、直接接合を可能とする表面活性化接合技術は微小化・集積化を続けるデバイスの実装において貢献することが期待されている。しかし従来のFAB照射では基板ホルダやチャンバ内壁への不要なスパッタが不可避であるため、金属汚染による表面荒れが接合不良を引き起こす問題となっていた。そこで今回私たちは、基板表面のみへのイオン照射が期待される光電子制御プラズマについて、表面処理プロセス技術への応用可能性を検討するためにイオンビーム源である光電子制御プラズマの放電特性の解明とその結果をもとにした基板へのイオン照射実験を行った。
 図1に2 inchサイズの基板直上に均一に生成された光電子制御プラズマを示す。プラズマ中のイオンの密度比が大きいグロー放電領域での表面処理により、Si表面は突起を形成しつつも1~2 nmという非常に平坦性の高い表面を維持していることが分かった。また機械研磨により350 nmの表面粗さを有していたAl表面は、100分間のイオン照射によって粗さが減少した。AFM観察像と断面図を図2に示す。Alと同様に機械研磨表面を有するCu表面においては、光電子制御タウンゼント放電中の低エネルギーイオンの照射によって38%の粗さの減少が見られた。また、これら表面形状の変化から光電子制御イオンビームによる平坦化効果のメカニズムを説明した。

図1. 基板直上に生成された光電子制御プラズマ 図2. Al表面のAFM観察像(a)及び断面形状(b)

   


2010年11月25日 加賀利瑛君が応用物理学会東北支部講演奨励賞を受賞


受賞対象論文
    加賀利瑛、穂積英彬、小川修一、佐藤元伸、二瓶瑞久、高桑雄二
     『光電子分光法によるSiO2(350 nm)/Si基板からの電子放出過程の解明』

賞の概要
応用物理学会東北本支部では、1996年から若手支部会員の奨励のために「支部講演奨励賞」を設けています。今回は、全講演71篇の中から対象となるものを選考委員会が慎重に審査し、うち3篇が支部役員会に推薦され、表彰が決定されました。本賞が受賞者の方は勿論、今後とも若手の研究奨励に貢献することを期待します。(応用物理学会誌より)

賞状/副賞


業績の要約  
 LSI配線応用のため、光電子制御プラズマCVD法を用いたSiO2膜への多層グラフェン成長プロセスの開発を進めてきた。光電子制御プラズマCVD法は基板への紫外光照射と直流放電プラズマを組み合わせた手法であるが、SiO2表面での光電子制御プラズマ生成機構はわかっていない。そのため、SiO2基板からの光電子の運動エネルギー分布をSi基板のものと比較することで光電子放出過程および光電子プラズマ生成過程を検討した。
 紫外線光電子分光測定の結果から、SiO2(350 nm)/Siにおける光電子の発生箇所はSiO2(350 nm)/Si界面のSi価電子帯からであることが明らかとなった。
 これにより、図1に示すように@紫外光はSiO2膜で吸収無くSiO2(350 nm)/Si界面に到達できること、ASiO2(350 nm)/Si界面で価電子帯上端近傍から励起された光電子は、SiO2膜の伝導帯下端よりも大きなエネルギーをもつのでSiO2膜へと注入されること、B光電子のエネルギーはSiO2のバンドギャップよりも小さいのでSiO2膜の価電子帯から伝導帯への励起は起こらず、非弾性散乱なしでSiO2膜を通り抜けられることが明らかとなり、SiO2(350 nm)/Si基板からの光電子放出機構を説明できた。
 また、光電子スペクトルを真空準位の立ち上がりを基準として比べてみると、図2に示すようにSi基板のほうがSiO2(350 nm)/Si基板よりも高い運動エネルギー分布であることが分かった。この運動エネルギー分布の違いから、Si基板とSiO2(350 nm)/Si基板による光電子制御プラズマ生成過程の違いを説明できた。




図2.光電子運動エネルギー分布比較

図1.SiO2(350nm)/Si基板からの光電子放出機構摸式




2009年12月7日 穂積英彬君がALC'09 Student Awardを受賞

受賞対象論文
H. Hozumi, S. Ogawa, A. Yoshigoe, S. Ishidzuka, J.R. Harries, Y. Teraoka and Y. Takakuwa
"Real-time Photoelectron Spectroscopy Study of 3C-SiC Nucleation and Growth on Si (001) Surface by Carbonization with Ethylene"

賞の概要
The Student Awards is designed to encourage young scientists to present their work. The award will be given to a limited number (around 10) of students.

賞状/副賞




2009年2月4日 小川修一君が第24回井上研究奨励賞を受賞

受賞対象論文
博士学位論文『熱酸化プロセスによる極薄シリコン酸化膜形成機構の研究』(東北大学、2008年)

賞の概要
理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した35歳未満(医学・歯学・獣医学の学位については37歳未満)の研究者で、 優れた博士論文を提出した若手研究者に対し井上研究奨励賞(賞状・メダル及び井上研究奨励金50万円)を贈呈されます。

賞状/副賞




業績の要約

 SiO2膜は現代の高度情報化社会を支えるMOS(Metal- Oxide- Semiconductor)型トランジスタ作製に不可欠な材料である。 MOSトランジスタのゲート絶縁膜は高温のSi基板にO2ガスを曝すだけで容易に作製できる。しかし、トランジスタの更なる高性能化にはSiO2膜の薄膜化が必要であるが、 1 nm以下の極薄領域におけるSiO2形成過程は未だ明らかになっていない。そこで本研究は1 nm以下の極薄酸化膜形成の物理的描像に基づいた定量的反応モデルを 構築することを目的として、極薄SiO2膜形成過程をリアルタイム光電子分光法(XPS)や、オージェ電子分光法と組み合わせた高速電子回折法(RHEED-AES)を用いて調べた。
 その結果、@Si酸化膜の成長にはO2分子と同時に、Si原子の未結合手が必要なこと、ASi原子未結合手はSiO2膜成長時に発生する格子歪みを緩和するために発生すること、 B発生する格子歪みの大きさはSi表面酸化の酸化条件に強く依存すること、C格子歪みの大きさの違いは吸着酸素の挙動に由来すること、が分かった。 以上の結果をふまえ、格子歪みの緩和は酸化膜中へのSi原子放出によって行われ、放出されたSi原子やSi原子が抜けた空孔がO2分子との反応サイトになるというモデルを提案した。 本モデルに基づきSiO2成長速度の酸素圧力依存を求めたところ、実験の結果と一致し本モデルの妥当性が示された。
 以上のように本論文によって極薄Si酸化膜形成では界面歪みによる点欠陥が極めて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。酸化反応で生じる欠陥はデバイスの特性や信頼性と深く関わっている。そのため本研究の成果は、欠陥の少ないSiO2/Si界面作製法や低温での絶縁膜形成プロセス開発への応用が期待される。




2008年3月25日 小川修一君が東北大学総長賞を受賞

賞の概要
東北大学の教育目標にかない、かつ、学業成績が特に優秀な学生を表彰するものです。

賞状/副賞





2007年11月12日 小川修一君が第16回真空進歩賞を受賞

業績
リアルタイム光電子分光観察を用いた表面研究

受賞対象論文
(主論文)小川 修一, 高桑 雄二:
「Si(001)表面酸化過程のリアルタイム光電子分光観察:仕事関数と界面電子状態」
真空 49巻 5号(2006)327-330頁

小川 修一, 高桑 雄二, 石塚 眞治, 吉越 章隆, 寺岡 有殿, 水野 善之:
「超音速窒素分子ビームを用いたTi(0001)表面窒化反応のリアルタイム光電子分光観察」
真空 49巻 12号(2006)775-779頁

賞の概要
真空に関する学理および技術の進歩に貢献する当該年度4月1日現在35歳以下の若手会員の業績を表彰する。

受賞理由
 固体表面における吸着・反応過程をリアルタイムで「その場」観察できることは、それぞれの過程のキネティックスなど学術的な研究に有用であるのみならず、半導体や金属の表面に原子スケールで制御された薄膜を作製する際に不可欠な技術であり、今後ますます需要が高まっていくと考えられる。なかでも、光電子分光法は表面に関して多くの情報を与えるので、この方法によるリアルタイム測定法が望まれていた。
 小川修一氏らは試料をパルス電流で加熱して加熱電流がオフの間に信号を高速サンプリングする方法で、表面反応過程における電子状態変化を光電子分光法によってリアルタイム測定することを可能にした。そして、まず、ゲート絶縁膜として高誘電率膜を利用した最先端MOS型FETでバイスの実用化のためにも緩衝層となるシリコン酸化膜の平坦性や組成を原子レベルで制御する必要があるとの観点から、Si(001)表面の初期酸化過程の研究を行った。そこでは、酸素吸着曲線だけでなく、未酸化領域の面積、バンドベンディング、仕事関数の変化から、酸化様式に依存して吸着酸素の挙動と界面電子状態が異なることを示している。Siの酸化については過去に多くの研究が行われているが、本研究では実験結果に裏付けられた説得力のある議論がなされている。
 次にチタン表面の不導体膜形成による機能化のためには飛来分子の吸着反応のダイナミクスを研究する必要があるとの観点から、超音速窒素分子ビームを用いてTi(0001)上でのN2分子の解離吸着反応を研究し、二種類の窒素吸着状態を見いだして、初期吸着確率の並進運動エネルギーに依存した解離吸着反応モデルを検討している。
以上のように、リアルタイム光電子分光測定を可能とし、リアルタイム測定の利点を生かして複数の表面反応の機構について有用な情報を得たことは高く評価され、今後の発展も大いに期待される。

賞状/副賞






2007年9月4日 小川修一君が第29回応用物理学会論文賞を受賞

受賞対象論文
Shuichi Ogawa and Yuji Takakuwa:
"Rate-Limiting Reactions of Growth and Decomposition Kinetics of Very Thin Oxides on Si(001) Surfaces Studied by Reflection High-Energy Electron Diffraction Combined with Auger Electron Spectroscopy"
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 45, No. 9 (2006)pp.7063-7079.

賞の概要
応用物理学の進歩向上に寄与する優秀な原著論文のうち、主たる著者が若手研究者(35歳以下)である優秀な原著論文を表彰する。

受賞理由
 Si集積回路において、ドライ酸化によるSiO2膜の形成は基幹プロセス技術であり続けただけでなく、次世代のシリコンテクノロジーにおいてもSiO2膜形成過程と物理特性の更なる精密制御が求められている。
 本論文では、著者らが提案している酸化誘起応力によるSiO2/Si界面での点欠陥発生 ( 放出Si原子、空孔 ) がSiO2膜形成・分解の律速反応であるとする統合Si酸化反応モデルを実証するために、RHEEDと複合化したAESによる測定を行っている。これにより、Si (001)表面での第2層酸化膜形成速度と酸化膜分解速度とが直線的に相関することを導き、予測されたように両者が同じ点欠陥発生過程で律速されていることを明瞭に示した。さらに酸化膜厚・被覆率のAES測定と、界面荒れのRHEED観察により、放出Si原子と区別して空孔の挙動を明らかにした。
 このように、本論文は酸化膜成長と分解、さらには電気特性までも統合的に理解できるモデルの妥当性を示したものであり、その中で筆頭著者の小川修一氏は、RHEED-AESだけでなく、UPS、XPSを用いたリアルタイム観察により同モデルの実験的検証を一貫して進めてきている。これらのことから、同氏はJJAP論文奨励賞の対象者にふさわしい。

賞状/副賞






2007年3月27日 小川修一君が第29回応用物理学会論文賞を受賞

受賞対象論文
小川修一、高桑雄二:
「Si(001)表面酸化におけるSi原子放出過程(VIII):第2層酸化速度の温度依存」

賞の概要
応用物理学会の春秋講演会において、応用物理学の発展に貢献しうる優秀な一般講演論文を発表した若手会員に対し「講演奨励賞」を授与し、その功績を称えることを目的とする。

業績の概要
 Si(001)表面でのラングミュア型吸着に引き続いて進行する第2層酸化膜形成過程を、AESと複合化したRHEEDを用いてリアルタイム観察し、Si表面層状酸化における第1層酸化温度の影響を検討した。
 O-KLLオージェ電子強度IO-KLLから求めた酸素吸着曲線を用いて、第1層と第2層酸化膜の初期成長速度k1k2を求めた。基板温度250-600℃では第1層酸化膜はラングミュア型吸着により形成され、 k1の温度依存は殆どなかった。しかし、k2はに示すように基板温度への強い依存を示した。k2は温度上昇とともに減少し、〜300℃で極小を示した後増加し、〜420℃で極大をとったあと減少し、約一桁変化している。 このようなk2の温度依存は、k1の温度依存、すなわち第1層酸化膜の酸素吸着曲線を用いて説明できない。ところが、第1層酸化膜形成過程における点欠陥発生(放出Si原子 + 空孔)は強く温度依存することがUPS観察から示唆された。 そのため、k2の温度依存の原因を、第1層酸化膜形成過程による点欠陥発生を用いて説明できることを明らかにした。

賞状/副賞





2006年11月14日 小川修一君がIWDTF Young Researcher Awardを受賞

受賞対象論文
S. Ogawa, A. Yoshigoe, S. Ishidzuka, Y. Teraoka, Y. Takakuwa
"Layer-by-Layer Oxidation on Si(001) Surface Studied by Real-Time Photoelectron Spectroscopy Using Synchrotron Radiation"
賞状



2006年2月4日 小川修一君がゲートスタック研究会服部賞を受賞

受賞対象論文
小川修一、高桑雄二
「酸化膜形成と欠陥発生の同時観察によるSi(001)表面酸化の統合的解明」
賞状/副賞





2005年3月25日 小川修一君が日本機械学会三浦賞を受賞

賞の概要
 日本では、大学学生数は従前に比べると、大学学部から工学系大学院進学者数が飛躍的に増大して来ましたが、大学・大学院における研究活動を行って来た大学院生に対する顕賞が整備されて来たとは言えません。そのため、工学とりわけ機械工学および機械システムに関連する、国内の大学院修士課程乃至は博士前期課程の優秀修了者を表彰することにより、日本のこれからの機械工学・機械工業を担う人材の活性化と機械分野のリーディング学会であり多数の学生会員数を擁する日本機械学会が、この社会的役割を担うことが必要であると考えました。
 本会特別(法人)会員である三浦工業株式会社は、この趣旨に賛同し本会への寄付金提供による顕彰実施提案をされ、これに基づき本会は、「日本機械学会三浦賞」を設けることにより、この分野で将来を期待される若者の顕賞を通して、2004年度よりものづくり日本の人材面での育成強化の一助を担うことになりました。
 この日本機械学会三浦賞を受賞されたみなさんは、日本国内の大学院機械工学系の当該年度修了者で、人格、学業ともに最も優秀であると認められた方々です。
賞状/副賞